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「雄賀多さんは、この後、時間空いてたりします?」
女の子がするように甘えた声で聞いてみる。胸はないから谷間はないけど、気持ちだけ寄せてみた。
「ちょっとアカネ、また今日も行くつもりかよ」
隣にいた風太がリーマンたちに聞こえないように小声で話しかけてくる。
「風太には関係ないでしょ。オレはヤりてぇんだよ」
「だからってそんな見境なくヤらなくてもいいだろ。俺への当てつけ?」
風太は珍しく食い下がらなかった。どうしても行かせたくないのか、手首をかなり強くつかんでくる。
「風太はオレには勃たないから、しょーがないだろ」
「ちがっ……「なーにー? ケンカ? 仲悪いの君ら」
茶髪の……あー興味ねぇから名前忘れた。ペラペラ喋るやつ、同属嫌悪? って言うんだっけ? その言葉の意味のまま、コイツ嫌いだ。
「いいえーケンカするほど仲良いって言うじゃないですか。仲良しですよオレら」
オレは風太に抱きついた。風太はそれすらも気に入らないみたいで、抱き返してこない。まぁいいけど。
「抱きつくこと自体、抵抗ないの?」
雄賀多さんがゆっくりと立ち上がって、オレの隣に立った。
「僕にも抱きついて欲しいな?」
「オレでよければ、もちろんですっ!」
むぎゅっと遠慮なく抱きついた。ジムに行ってるのか、筋肉が付いていて思った以上に硬かった。なんだ、ぷにぷにのビール腹だと思ったらそうじゃない。
抱きついて上を見上げれば、雄賀多さんと目が合う。ふふっと微笑まれ、大人の魅力にやられたオレは心臓がドキドキしていた。
つい最近、タチネコ直感が外れたばっかりだけど、今度は当たる気がする。
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