真夜中の論争 5

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 授業が終わったチャイムの音。女子が全員出て行き他のクラスのやつらが来る前に着替えてしまおうと思っていた。焦りから手を滑らせタオルがはだける。すぐに手で隠し、タオルを拾い上げた。顔を上げた先に感じる視線。見られた自分の下半身。そして――大声で言われる言葉……。  トラウマになるほど、その言葉は思い出せるのに、言った張本人は、ぼんやりとしていて顔も髪型も体形も全く思い出せない。  知っているのは『大形』っていう名前だけ……いや『おおがた』なんてやつ隣のクラスにいなかった。無意識に架空のクラスメイトを作り上げいたことに気づく。隣のクラスにいたのは……あの日、オレに『女の子みたい』って言ったのは―― 「雄賀多だ……」  あいつに兄貴がいたなんて知らない。なんで、本人じゃなくて兄貴が来た意味が分からない。この後、本人と出くわしたらオレの心臓はどうにかなっちゃいそうだ。 「正解。僕の弟さ、君の短小なちんちんを見て『ペドフィリア』に目覚めてしまった」 「ぺ、どりあ??」  初めて聞く言葉に頭が追いつかない。意味もわからないし、英語は得意じゃない。  何が気にくわなかったのかわからないけど、オレの股間を痛いぐらいに握りしめられた。 「痛い痛い痛い!」 「ペドフィリア。トラウマ植え付けた人の名前も忘れちゃう暁音くんには分からないかな?」  すごくバカにされてるのは分かったけど、その通りだから頷いた。 「バカな暁音くんに教えてあげるね。ペドフィリアって言うのは、幼稚園児以下対象しか欲情しない現象。そのせいで、あいつは今苦しんでいるんだよね。だからさ……暁音くんを連れていったら喜んでくれるだろうな……」  メガネの奥から覗く目はおかしくて、異常だった。本当にやるつもりだ。そんなとこに連れていかれたらオレはどうなってしまうのだろう? 連れて行かれたことを想像して、ブルリと身震いをした。 「でも、よ、幼稚園児以下に欲情するならオレを見ても……「やってみないとわからないでしょ? 気に入ったならそれでいいし、監禁したって幼稚園児よりかはマシだ」 「か、監禁……?」 「僕の弟次第だね。でもこれで良かったんじゃないかな? これで暁音くんは風太くんで悩まずに済むんだから」 「え?」  突然、雄賀多の口から風太が出てきた。もしかして、オレと風太の秘密を知っているのか? 「あの子、ネコでしょ? 僕、ヤったことあるし、なんなら一時期お付き合いしたこともある」 「嘘だ!」  付き合うなんてありえない。こんな風太に似たような格好したやつなんか、風太のタイプじゃない。嫌っているはずだ。きっとお遊びだ。そう信じたくても信じられない自分がいる。もう、何を信じたらいいのかわからない。
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