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真夜中の論争 5
色とりどりの鮮やかな照明に、DJが流すBGM。プールサイドには、オープンテラスのレストランがあり、ハワイアンスタイルの料理やトロピカルドリンクが運ばれている。
プールの水面には、花模様のプロジェクションマッピングが映し出され、映えた水面で写真を撮る女がたくさん群れていた。そんな自撮りに夢中な子達に混じり、オレらも混ざって自撮りをする。
「待って、今ぜっったい顔ブスだったから撮り直して」
風太がスマホに手を伸ばす。オレはもちろんスマホを意地でも渡さない。
「風太はいつ撮っても変わんないから撮り直さない」
「えぇ? 酷くない? アカネの時は盛れるまで100枚ぐらい撮りなおすのに!」
「オレなんか、風太と違って最高にかわいく盛らないと、風太の隣に並べられないもーん」
そのまま風太に抱きついて、ほどよく引き締まった身体に触れた。オレは筋トレして筋肉がやっとつくけれど、風太は何もしなくても筋肉がついてるからうらやましい。
自分にはない高スペックに嫉妬する。
風太に抱き付いたから、身体が少し沈んでスマホを落っことしそうになった。だけど風太のものだし、それに防水だからプールに落としても大丈夫なんだけど。
「スマホ、防水だからって落とさないでよ」
「はーい」
考えていたことがバレて、すぐにスマホを300均で買ったニコちゃん防水バッグに入れて風太へ返した。
それにしても風太のお陰でタダでプールに入れるし、その後ホテルに泊まれるなんて家に帰る気は失せる。週末になると毎回楽しくおちゃらけていた。だけど正直、風太とこの関係はつらい。
「どうしたの? アカネ」
そんなオレの考えとは違い、悪びれた様子もなく笑顔な風太。
「なんでもない。腹減ったし、何か食おうぜ」
風太に背を向け、プールサイドへ移動する。バシャバシャと水面に映し出されるプロジェクションマッピングの花を蹴散らしながらプールサイドへ上がった。
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