深海に消える

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「うん、いいよ」 真夏。扇風機の音が響く図書室。うらやましいくらい日焼けを知らない白い肌。形のいい唇がそう動いたとき、私の心は躍り上った。 初恋は叶うもの!まるで少女漫画の主人公みたい! 「でも、ひとつだけお願いがある」 図書室でいつも、難しそうな本を静かに開いている彼。緑色のハードカバーの本がお気に入りで、たまに目が合うと優しく微笑んでくれる。名札の色からすれば、私と同学年。 大浦くん、か。 廊下ですれ違った記憶はないものの、落ち着いた低い声は、イメージにぴったりだった。 「俺が人魚だってことは、内緒にしてほしい」 人魚ね、うん。 「はっ?」
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