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八
玄関のドアノブに手をかけたまま、呆然とした。
「……急に成長、しすぎじゃね?」
身長俺と同じくらいか、もしかしたら抜かれてる?
いやそれより顔立ちが。
まったく少年じゃなくなっている。
どういうこと?
「先に兄さんのところに行ってきたんだけど、兄さんにも言われたよ。お邪魔してもいい?」
衝撃すぎて玄関に突っ立たせてしまった。
慌てて家に上げ部屋に向かおうとすると、光樹が俺の手を取ってそれを止める。
振り向こうとしたとろを腰から抱き寄せられた。
向き合った光樹の目は少しだけ見上げる位置にあって、幸せそうに微笑んでから、くちびるを重ねてくる。
くちびるを離すと、照れ気味に笑った。
「ふふ。やっと背伸びしないでキスできるようになった」
表情と声が、記憶にある光樹とようやく合致した。
「やっとって。そんなに長い道のりじゃなかったぞ」
抱きしめ返すと、光樹はまた軽くキスしてきた。
以前は正面から抱きしめるとき肩の上から包み込む形になっていたが、光樹の脇から背中に腕を回す形。
思うままにくちづけると俺のほうが光樹にすがるようなキスになって、なんか、変な気分になった。
地元で買ってきた菓子を俺に手渡してローテーブルの横に座った光樹は、初見ではビビったがよくよく見ると、そんなに違和感がない。
「春斗さんも少し変わったよね、あか抜けた感じ。大学生だからかな」
わかった、声が顔に合ってるんだ。
声は電話で常日頃聴いてたから、たいして変わってはいないはず。
堂々とした、迷いのない声。
別の次元からしゃべってんじゃないかって言ったクールな男の声も、この顔で発言してるなら納得がいく。
顔に似合わずしっかりしたやつだと思っていたが、サラッと生徒会長したり明確な将来の目標があったりするの、この光樹ならわかる。
「俺なんて光樹に比べたらなんも変わってないだろ。光樹、中身に外身が追いついてきたんじゃね? 性格イケメンが見た目もイケメンになっちゃって」
「それも、兄さんに言われた」
「遠田の弟だしな、でかくなって当たり前か」
こうなる前兆はいくらでもあったわけだ。
まだ変な感じはするけど、向かいに座って光樹を眺めると、相変わらずスゴい好きだって思う。
気持ちは、変わってない。
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