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同性の上級生に告白とか、イメージだとモジモジとかナヨナヨとかしてそうなのに、してないんだよな。
そして俺的にこいつはとんでもないことしてんのに、常識的に見えて堂々としてる。
演劇部員だからかな?
「そう、面識ないからさ、好きって言われて付き合おうとはならないよ?」
こちらも常識的に返してやる。
すると光樹は、落胆もせずに問い返してきた。
「友達から始めるのはありですか?」
はぐらかしてもあきらめる気はなさそうだ。
どうすりゃいいかなー。
俺、こいつと付き合う気ないんだけどな。
簡単にフったら遠田に悪い気もするし、かわいい顔してるから断るのかわいそうだし、真剣そうだからなんとかしてやりたい気もするし。
いや、なんとかするのは無理か。
「なにも始まらないかも知れないけど友達になる、ってのはダメかな?」
百歩譲って提案してみると、光樹はあわてたように片手を挙げた。
「あの、無理しないでいいんですよ。俺も告白する気なんてなかったんですから」
あれっ、あきらめるんだ?
話を聞くと、遠田が勝手に唐突に段取りつけて、光樹はたいした心構えもないのにここに来たらしい。
遠くからあこがれているだけで充分だったとか。
「困らせてごめんなさい」
俺、困った顔しちゃってた?
あやまる顔がすごいさみしそうで、俺は思わず、しなくていいって言われた無理をしてた。
「いや、うん、もう面識あるから友達でいいだろ! 俺今から部活だから、連絡先の交換だけでもしとこーか」
「いいんですか? ありがとうございます!」
光樹の沈んでた表情が急に超明るい顔になって、なんかビビった。
そんなに嬉しいのかよ、って。
連絡先をゲットすると、光樹は今度は期待に満ちた表情になる。
「名前で呼ばせてもらってもいいですか? 春斗さんって」
「いいよ。なら俺は光樹って呼ばせてもらうぞ。遠田って呼んだら龍樹と同じになるし」
顔に似合わず堂々としてんなと思ってた光樹はその時、顔に似合った照れ混じりの笑顔を見せた。
「はい」
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