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十
高校では光樹にしか告白されなかったのに大学生は色気付きやがって、いろんな奴が付き合ってる子はいるのかと聞いてくる。
男と付き合っているとは言えなくて、俺は遠田の許可を得て遠田の親戚と付き合っていることにしていた。
妹とか言ったら、弟いるの知ってる奴に突っ込まれるからな。
以前は遠田に似ていると言うと話はそこまでで終わっていたのだが、周囲と親しくなるにつれて怖いもの見たさで彼女の写真を見せろと言ってくる奴が現れた。
かたくなに拒否していたら、遠田の親戚じゃなくて遠田自身と付き合ってるんじゃないかと言い出す奴が現れた。
「なぁ俺、遠田と付き合ってるってことにしていいか?」
部活が終わってから一緒に夕飯買いに行く道中、遠田にそう聞くとやはり激しく反論された。
「いいワケないだろ!? 俺に彼女ができなくなるじゃねーか!」
ダメか。
最近隠し続けるのがしんどくなってきた。
相手を騙してること、光樹を隠すことで光樹を下げてるような気分になることが申し訳ない。
「光樹と付き合ってるの、言ったらどうなんだろ? やっぱ感じ悪い?」
客観的に見たらどうなのか、周りに同じような奴がいないからわからない。
なんとなく隠しとくもんな気がして、隠してる。
「俺は光樹がいるからなー、人によるんじゃねーの?」
「黙ってると遠田と付き合ってることになりそうなんだけど 」
「それ困るからカミングアウトしちゃってくれる?」
遠田にはなんだかんだで助けられているから、これ以上は迷惑かけられない。
言っちゃうかやめとくかまだ迷っていると、遠田は少しマジメな顔で助言してきた。
「気ぃつかって嘘ついてよそよそしくなるのと、カミングアウトして感じ悪くなるの、どっちもどっちじゃねーか? 鷹沢はどっちがマシだ?」
正直に言ったほうが、マシだな。
偽ることは、俺にはちょっと耐えられない。
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