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十一
文化祭は土日開催で、例によって光樹がアパートに泊まりに来る。
気まずいが人目のある場所で弁解するのもはばかられて、ヘコんだ気分のまま飯を食って帰宅した。
ベッドに腰掛けると、光樹はほんの少し間を開けて隣に掛け、あやまってきた。
「ごめんなさい」
「いや、俺が悪い。カミングアウトしといて、人目気にしてるとか」
俺が俺じゃないところを他人に見せることが、嫌だった。
俺は自分の中の迷いを光樹に白状する。
小さい光樹に対しては、俺は俺でいられた。
色気出して絡んでくるわけじゃなかったから、人前で抱きつかれても抵抗がなかった。
でも今は、いや今も別に光樹は色気を出して絡んでるわけじゃないんだろう。
以前同様の愛情表現されても、俺が勝手にそこに色気を感じちゃって、光樹にすがろうとしてしまう。
年下の男にデレてる自分が俺の本性だと解釈されるのが、ただただ恥ずかしい。
「実際俺の本性なんだから、隠す必要ないんだろうけどさ」
「俺にはデレたとこ見せていいんだよね。外で俺が気をつければいい話だ」
光樹を避けたわけじゃない、誤解が解けるとさっそく光樹はこちらに身を乗り出して、ほほにキスをしてくる。
「ねぇ、デレたとこ見せて。俺の前でもまだ恥ずかしがってるでしょ」
あぁ、もう一つ困ってたことあったな。
小さい光樹とこの光樹を同一視できない問題。
恥ずかしがってるわけじゃなく、前の光樹に悪くて今を素直に受け入れられない。
「あのさ、今日は声劇やんないの?」
「どうしたの急に?」
話をそらしたが、脈絡がなさすぎた。
今の光樹が声劇をやってるところを見たら、前の光樹とちゃんと合致するかと思ったんだけど。
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