十二

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十二

 冬季休暇に入って間もなく。  光樹はこちらに来るとき家族に対して兄のアパートに行くと言ってあるから、律儀に遠田のところに寄ってから俺のアパートに来る。  すぐにでも会いたいのなら遠田のところに邪魔すればいいのに、デレるところをうっかり見せたくなくて、俺は自分のアパートで光樹が来るのを待つ。  光樹が来たら存分にデレる。  会えなかった期間は二ヶ月ほど。  玄関で速攻抱きしめて満足いくまでキスをしたから、すぐに光樹にベッドへと連れていかれた。  離れているから余計恋しく、想いを止められなくなってしまう。  部屋で少し休んでから飯を食いに外に出る。  グダグダになるほどデレまくったから、外でそれを耐えるのがキツい。  光樹の端正な顔を見ると気が緩んでしまうから、目をそらしてしまう。  そんな自分を見せたことに、何度も悔やむ。  光樹も外では、俺と似たようなもんだった。  頼れる男を演じようとしながら、時折ほころびが見え隠れする。 『外では気をつける』と言った通り俺に手を出さないよう注意を払っているのがありありとわかる。  俺に寄り添おうとして慌てて一歩引き、目をそらす。  隣に掛けようとしながらわずかにハッとした顔で向かいに座る。  光樹もきっと、会えなかった今日までの想いが止められないでいる。  電話では気づかなかった、変わろうとして変わり切れていないこと。  光樹と付き合うと決めた日、光樹は甘えてもよいのかと聞いてきて、俺は甘えればいいと言った。  光樹は本当は、甘えるように俺に接したいのではないか。  抱く側になんてなるつもりはなかったのではないか。  俺は抱かれる側になりながら光樹の色香に目がくらんで、そんな光樹を見過ごしてはいなかったか。  過去の光樹と別れると決めたのに、今さらになって過去の光樹の姿を見た。
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