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 スマホのメッセージで日曜のやり取りしたときは、事務的な文面でホントに喜んでるのかわかんなかった。  けど待ち合わせ場所に来た光樹は、笑顔が隠せない様子で終始ニコニコしていた。 「私服の春斗さんもカッコいいな。胸板とか腕とかスゴイね」  駅からカラオケ店までの道中、光樹は周りの目も気にせずそんなことを言ってきた。  素直に褒めてんのかいかがわしい目で見てるのかわかんねー。 「遠田はもっとすごいだろ」 「兄さんは見慣れてるからなんとも思わないんだけど、春斗さんは顔と身体と中身のギャップで、色っぽく見える」  ……いかがわしい目で見られてんのかな?  少年にそんなこと言われてもドギマギとかするわけでもなく、ただなんとなく気恥ずかしくて、俺は話をそらす。 「俺ね、カラオケ本気で好きなんだよね。家でもスマホのアプリで歌ってるレベルで」  仲間とカラオケ行くと順番があるしあんまりガチにもなれない。  一人カラオケする度胸もなかったので、実は二人カラオケを俺は楽しみにしてたりする。 「なんのアプリだろ? 俺もカラオケのアプリ持ってるよ」  俺がそのアプリを見せると、光樹の使っているアプリと同じものだった。  ただ、俺はカラオケ録音をアップロードしながら同じ趣味の人間と交流するのに使っていたが、光樹はさすが演劇部、『声劇(こえげき)』をするために使っていた。  音楽に歌を乗せるんじゃなくて、BGM流しながらセリフを読み上げるやつ、俺はやったことないけど。  カラオケ店に入ってすぐにアプリのアカウントをフォローし合うと、やはり光樹は心底嬉しそうな顔をした。  さっそく俺から歌うと、光樹は俺を絶賛してきた。  低くて甘くて安定してるそうだ。  俺も歌は自信あるほうだけど、演劇部員に詳細に褒められるのは気分がいい。  そして光樹の歌は。  遠目に美人だと錯覚させる人間、声がクリアで響きがいい。  やはり歌も相当上手かった。  単に上手いんじゃない、心がこもってるんだろうか、聴き惚れる歌いかたをする。  真剣な眼差しで歌い終えたところを褒めると、光樹はとたんにうっすらと照れる。  普段の会話の声はクリアさとか響きだとかは意識してない、顔に似合わず堂々とした迷いのない感じ。  歌声とのギャップが、面白いような圧倒されるような。  俺を不思議な気分にさせた。
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