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 二人で思う存分歌って、夕飯前には家に帰ってきた。  遊びに行ったっていうか本気で歌を歌ってきた感覚で、楽しかったってよりも面白かったって感がある。  飯を食ってから例の音楽SNSのアプリを開き、さっそく光樹の声劇(こえげき)を聴いてみた。  なんか、素人(しろうと)じゃなかった。  あいつっぽいかわいい少年を演じたものもあったが、温和な大人の男とか、気性が激しいやつとか、とぼけて間の抜けた軽いのだとか、いろんなタイプの語りを完璧に演じている。  光樹が本来どういう姿形をしていたのか、一瞬見失う。  ジュリエットが美人に見えたのはたぶん、この演技力だ。  チビで俺の言動に過剰に喜ぶ変わったやつなのに、尊敬の念すら湧いてくる。  何個も声劇を聴いていると、光樹の声劇の中に『ユニット可能』となっているものがあった。  ユニットとは、カラオケするならデュエットとかハモりを、声劇なら登場人物が複数で他の役の声を重ね録りできる機能。  デュエットはしょっちゅうしてるけど、俺は声劇自体したことがない。  けど、なんか興味あるなー。  歌だと知らなかったら音程とリズム覚えなきゃなんないけど、声劇なら文章読めばいいんだし。  俺がユニットしたら光樹、また喜ぶんじゃないかな。
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