35人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、昼休みに遠田と教室で飯を食っていると、光樹が教室に入ってきた。
遠田に忘れ物らしきビニールに入ったなにかを渡す。
気兼ねなく渡して受け取る二人を見て、本当に兄弟なんだなと地味に納得してると、光樹が俺に向き直った。
「なに?」
「ユニット、すごくよかった」
それはアップロードしたトコにもコメントで書いてあったけど、ジッと見つめて言われると、照れるな。
「国語の朗読みたいに読めばいいんだろとか思ったけど、だいぶ難しいな。めちゃくちゃ録り直したぞ」
「初めてなのにBL声劇するんだもん、面白かったよ」
「だってなー、他に相方が女の子の声劇しかなかったから」
男と男がイチャコラする声劇しかユニットできなかったんだから、しかたない。
『俺が一番興味あるのはおまえだよ』とか『おまえが大好きだってことだ』とか言っちゃったからね。
告白されて友達で妥協したやつに、劇とはいえこういうこと言っていいのかなと思いつつ、好奇心でやってしまった。
「光樹の声劇、声優みたいだろ。中学のときからほぼ毎日やってるからな!」
なぜか遠田が自慢気になる。
俺、兄弟いないからわかんないけど、男兄弟ってこんななの?
「遠田ってブラコンなんだな、知らなかった」
こんなかわいい弟いたら、否が応でもブラコンになんのかな。
観覧が自由で観るつもりもなかった演劇部の舞台も、遠田に無理矢理付き合わされて観たようなものだった。
茶化したつもりなのに、遠田は真面目に答えてきた。
「いや光樹ね、贔屓なしでいろいろすごいから。自己主張強いわけでもないのに中学でサラッと生徒会長とか演劇部長とかしてたんだぞ。性格イケメンっていうの?」
ブラコンでは、なさそうな。
遠田は一人の人間として、光樹を尊敬してる?
そんな感じ。
昼飯中だったので、光樹はすぐに帰っていった。
光樹、スゴいヤツみたいなのにそうは見えなくて、やっぱりなんか不思議なヤツだなと思った。
最初のコメントを投稿しよう!