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五
光樹は部屋に入ってきたときのように驚いた顔をして俺を見る。
そしてすぐに、目を伏せた。
「やっぱり、男を好きになるのは、困るよね」
「いや違う、そういうわけじゃない」
慌てて否定する。
口は動く、ホント、そういうわけじゃない。
「どうしようって俺に聞かれてもな。俺も好きです付き合って下さいって、言っていいの?」
「そうか。そうだな、そうするか」
急に湧き上がったデカすぎる感情、どうすりゃいいのかワケわかんなくなってたけど、両想いだから迷わず付き合えばいいんじゃないか。
再度驚く光樹を、座ったままふところに抱き寄せてみる。
なんかもう、ホント好き、それしかない。
「なんなの急に」
自分にツッコミを入れてホント好きを堪能していると、
「春斗さん」
ふところから光樹が声をあげた。
抱き寄せた腕を解くと、光樹は深く息を吐いてから顔をこちらに向ける。
頬が赤らみ瞳が潤んで見えて、かわいい、じゃない、色気がある、ような。
「なんか俺、ちょっとおかしいよな」
光樹に見惚れつつボーッとしたままつぶやくと、光樹は神妙な表情で俺をうかがう。
「うん。急にどうしたの」
「あー、スゲーしっかりしてるのにかわいいヤツが懐いてくるとか、好きってなるの当然じゃない?」
「俺、かわいくないでしょ。顔も性格もかわいくないって、自分では思ってるんだけど」
まぁ、ぱっと見普通の少年で性格もきっちりしてそうだけどな、俺から見たらそうでもない。
「笑った顔かわいいだろ。性格イケメンなのになんとなく甘えたなとこもかわいい」
言うと光樹は俺の背後に回って、背中にもたれて抱きしめてきた。
「甘えていいの?」
「なんだ、甘えちゃまずいって気ぃ張ってんのか? 甘えればいいだろ。いや、甘えて、それ好きだから」
光樹は俺の背中に頬をすり寄せて、笑った。
「嬉しい。ありがとう」
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