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一
ラグビー部の友人遠田龍樹の弟は高校文化祭で『ロミオとジュリエット』のヒロイン・ジュリエットを一年生で演じ、『美人らしい』と噂だった。
舞台上の姿を遠目に見たきりで実際のところはどんなもんか知らなかったが、俺は今、その弟と対峙している。
「気を悪くしたら申し訳ないんですが、俺、鷹沢さんのことが好きなんです」
即座にそういう趣味はないと突っぱねなかったのは、友人の弟だったからか、ジュリエットだったからか。
遠田に学食に呼び出されてなにごとかと思って来てみたら、待っていたのは弟の光樹で、着席して早々告られた。
美人、ではないな、ジュリエットも別に女に見えたわけじゃない。
かわいい後輩、って感じだった。
背が低く大きな瞳に素朴な短髪黒髪が『少年』ってイメージだ。
「あのさ、遠田は、龍樹はなんて言ってたの?」
弟が男に告白する件に協力するなんて、遠田はなにを考えてるのか。
「俺、兄さんのラグビーの試合見に行って、ベビーフェイスなのにガッチリしてる鷹沢さんに一目惚れしたんですよ。応援行くたび鷹沢さんカッコよかったって言ってたら、そんなに言うなら告白しろって昨日言われました」
兄貴公認なのかよ。
ベビーフェイスって、お前が言うな、なんだけど。
試合前後の俺の振る舞いを見て、俺の人となりにさらに惚れたとか言い出した。
「兄さんが伝えてやるって言うから、自分で伝えるって言ったんです。面識ないのに急に出てきてすみません」
なんか違和感があって、すぐ気づく。
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