ある春の朝 新宿駅で

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ある春の朝 新宿駅で

 私は父親の親戚の知り合いという80歳くらいのじいちゃんが一人で暮らす家の二階の二部屋を借りていた。その家は京王線笹塚駅から歩いて10分くらいの住宅街にあった。トイレや風呂や台所はじいちゃんと一緒で、はっきり言えば、じいちゃんの家の二階に住んでいるみたいな感じだった。  朝は、じいちゃんが炊いたご飯を食べた。冷蔵庫にあるものは好きに食べていいと言われ、私はほぼ毎日、納豆かタマゴかけご飯を食べた。  通学には、新宿で京王線から山手線に乗り換える。ある朝、乗り換えの為、人ごみに流されて駅の構内を移動している時、どこかで苦しそうな若い男の人の声が聞こえた。 「助けてください。どなたか手を貸してください。」  声のする方へ行こうと思ったが、朝は人の流れが激しく、みな急いでいるため、その流れに逆らって移動するのは困難を極めた。ようやく声のする近くまで行った時、私は何かのイベントか撮影なのかと思った。
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