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9,
翌土曜の夜、オレはまたしてもスタートラインから、来ているかどうかもわからない彼女の姿を探す羽目になった。
というか、むしろたぶん、見つけられる訳がないと思っていた。
彼女は昨日、花火を見たのだ。
少し気持ち悪い男に絡まれて、でも、綺麗な花火を堪能して、たぶん満足して誰かと一緒に帰った。
たぶん、そんなところだ。
そこで、ふと気が付いた。
そういえば、昨日彼女のまわりに、連れらしき人間が誰も居なかったことに。
なぜかは本当に分からない。
ただ、二日連続で奇跡が起こった。
オレは彼女を見つけ、呆然としていた。
彼女は、なぜかひとりだった。
雑踏から少し離れた場所で、夜の星空を静かに見上げていた。
相変わらず綺麗なその姿。
そして、オレはまた、彼女に声をかけた。
一人で来た理由を聞かれて、たぶん適当な答えを返した。
オレにとっては、そんなことどうでもよかった。
ただ、なぜ彼女がまたここに来ていたのか、その理由が知りたかった。
だけど、どう聞けばいいのか分からなくて。
あと、数分しかないのに――――。
そして、あっという間に時間が過ぎ、オレは見事に前日と同じ過ちを繰り返した。
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