【リクエスト】ウロくんの王様講座

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「王とは」  その言葉を発すると同時に、ウロの姿が歪み、みるみるうちに赤の王の姿になる。そしてその口から、赤の王の声が滑り落ちた。 「民の総意を具現すべき存在である。民が平穏を望むのならば平穏を。争いを望むのならば争いを。そこに私の意思は介在せず、異を唱える権利もない。それで国が滅ぶとしても、それもまた民の意思だ」  表情らしい表情もなくそう述べた赤の王の姿がぐにゃりと歪んだかと思うと、今度は青の王の姿へと変わった。 「王に足るこの血筋を守り、より王にふさわしい者を後世に残すべきが王です。魔法のような生まれもっての能力には、どうしても血統が関わってくる。私たち王族は、可能な限りそれを混じりけのない純粋なものとして保つべきです。その行いこそが、次代の優れた王を生むのですから」  冷たさすら感じさせる静かな声がそう言えば、青の王の流麗な姿が歪み、次は大柄な男、橙の王の姿が現れた。 「いついかなるときも先陣を切り、立ちはだかる壁を破壊するのが王だ! 乗り越えるなど生ぬるい! 困難を完膚なきまでに叩き壊し、儂の生きざまをこの背で語る! それを見て初めて、民は心から儂を信頼し、付き従ってくれると言うものだ!」  そう言って豪快に笑った橙の王の姿が、またもや歪む。そして今度現れたのは、緑の王だった。 「あらゆる言葉に耳を傾け、一人よがりにならないことが、王に求められることですわ。民を信じ、民の意見を常に取り入れ、民と共に国を良くしていくのです。王というものは、たった一人で最良に至れるものではありませんもの。民と共に歩み、互いに高め合うからこそ、真に王に相応しい人間になれるのです。だからわたくしは、王は決して一人になってはいけないものなのだと思いますわ」  しとやかな声がそう言えば、目を伏せた緑の王の姿が歪んだ。次いで像を結んだのは、黄の王だ。 「常に笑っておちゃらけるくらいの余裕を見せるのが王でしょ。民との距離はなるべく近く。多少馬鹿に見えるくらいが丁度良いかもな。俺が笑ってるだけで誰もが安心できるようになったら、それこそ王冥利に尽きるってもんだ」  そう言って黄の王の姿が軽薄な笑顔を見せれば、次に現れた萌木の王は、黄の王とは打って変わった、落ち着きのある穏やかな微笑みを浮かべた。 「疑うことこそが、王の本質なのではないかな。少なくとも、僕は誰も信じない。勿論、僕自身のこともね。生き物なんて、大なり小なり過ちを犯すもので、たとえそれが神であろうとも、きっと変わらないだろう。だから、僕は常に全てを疑ってかかるよ。思考をやめないことこそ、国を導くために最も重要な手段だと考えているからね」
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