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叔祖母が死んだのは、最初に雪女の話をしてくれた時から、八年ほど後だった。
古希を待たずに死んでしまった彼女は、かなりやつれてはいたものの、年よりずっと若く、美しく見えた。ここ一年ほど入院している間はずっと苦しそうだったから、これほどの柔らかい笑顔は久々で、この顔で死んでくれて良かったと思った。
「菜緒はおばあちゃんによく可愛がってもらっていたからな。しっかりお別れを言ってきなさい。」
お別れなんてもうできないよ。もうおばあちゃんは死んじゃったんだから。
私は叔祖母のことが本当に大好きだった。いつも優しくって、私の話をいつも聞いてくれて。ともに兄との年が七つも離れている、ということも、親近感に繋がったのだと思う。それに、年を忘れるほど可愛らしい人だった――
叔祖母は、雪女の話もそうだが、私の祖母が死んだ時の話もよくしていた。
「義姉さんと初めて会ったのは病院でね、私が確か、七つのときだったよ。両方とももともと病弱だったから、常連客同士だったのさ。そこで、本当に妹のように可愛がってもらってね、私は義姉さんが大好きだった。結婚してからは、よく兄上に嫉妬したもんさ。」
祖母のことを語る叔祖母は、雪女の話をする時と同じ目をしていた。
「……でもね、義姉さんが死んでからは、嫉妬なんてもんじゃあなくなったよ。子どもなんて生まなければ、義姉さんは死ななかったって、本当に兄上を呪った。その癖して、可愛い可愛い甥っ子は、大切にしていたけどね。本当に、都合の良い奴だよ。」
叔祖母は、祖母が死んだ後の自分の胸には、ぽっかり穴が空いていた、と言っていた。そして、その穴をちゃんとしたもので塞いでくれたのは、私が初めてだとも。
きっとその穴は今の自分にも空いているだろう。私はそんなことを思った。
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