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「それから、私たちはいっぱいお話をしたわ。最初は叔祖母さんのことだったけど、どんどんどんどん話は広がって、好きな小説のこと、学校の友達のこと、その時飼ってたカナヘビのこと……」
「それで、雪女さんはどうなったの?」
私は今、昔見た不思議な夢の話をしている。夏休み中の、可愛い可愛い姪っ子がそれを、二つのくりくりの目を輝かせて聴いている。
「それでね、楽しい楽しい話に、ひと段落がついた時。雪女さんは言ったの。」
軽く、息継ぎをする。
「あなたは、このままここにずうっと居る?それとも、向こうに戻るのかしら。って。」
その時、冷たい存在であるはずの雪女の笑顔に、少しの寂しさを感じた。
「また、会える?」
「あなた次第ね。でもきっと会わないほうがあなたのためよ。」
「……そう。」
私は、質問の答えが、なんとなく予感した通りであったことに落胆した。
「それで、どうするの?もう去ってしまうのなら、ここの刺さるように冷たい空気をめいいっぱい吸い込んで。私と一緒にここに居座るなら、私に口づけをしてちょうだい。」
私は彼女の、血の引いたようでありながらも柔らかそうに見える唇に視線を注ぎながら、肺いっぱいの空気を取り込み、体温で温めた。そしてその矢先――
「私は、帰りの電車で目が覚めたの。」
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