Episode1 野球場のシンデレラ

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「才谷くーん、一校だけ受けてくれたよ」  登校した朝、柊は庄田先生の高い声を聞いた。 「一校だけか……どこです?」 「三日後の日曜日で、小平東高校」 「強いんですか?」 「去年の一回戦で負けてた」 「……なるほど。あと先生、なるべく練習試合は違う地区に連絡入れてください。手の内がバレるので」 「あー、そうなの? ごめんね」  柊はずっと気になっていたことを訊いた。 「先生、失礼ですけど、野球のご経験は?」 「今年初めて触れ合ったよ野球に!」 「ありがとうございました」  柊は一礼すると、教室に戻った。孤独だ。柊はため息つこうとした時、目の前に人影が現れた。真由だった。 「先生と話されてましたよね。練習試合、どことですか?」 「三日後の日曜日に小平東高校だと」 「ふーん、舐められてますね。確実に」  真由は分厚い黒縁メガネを上に押し上げた。 「わかるの」 「ええ。西東京地区の高校の情報は全て。わかりました。部活の際初めにミーティングをしましょう」  勢いに飲まれ、柊は頷いた。真由が去っていくと、希望の光が見えた気がした。
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