彼が語った彼女の秘密

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彼が語った彼女の秘密

「いま、なんて……」 「だから、俺のせいであいつは死んだの!俺が担任教師を病院送りにして鑑別所送致になって、あいつは病んじまったんだろ。あんたは巻き込まれただけ!俺が言うのもなんだけどあいつイイ女だからな。見た目まだ二十代だし。あんたが誑かされるのも無理ねぇよ」  腹の底から無数の蟲が湧き上がってきて唇が震えた。正座した膝の上の手を自然と握り締めていた。 「……ざけるな」  弾かれたように彼が顔をあげる。 「ふざけるな!」  即座にその場を立ち上がり、僕は彼の家を飛び出した。外はすっかり日が暮れて真っ暗闇を脇目もふらずに駆け抜けた。  そんなこと麻里子は僕に一言も言わなかった。結局、そういうことか。 「おい!」  背後から腕を掴まれて強引に引っ張られた。 後方に倒れそうになった所を抱き留められて、目の前をトラックが盛大なクラクションを鳴らしながら通過した。 弱々しい街灯がちらほらともるだけのガランとした交差点で僕は打ち砕かれていた。 涙が溢れて止まらない。声をあげないのが精いっぱいの意地だった。 「……そんなに好きだったのかよ。俺の母親」  声まで似てる。 「さっさと、声変りしろ」  僕を支えながら彼は背後で「もうしてるわ」と不機嫌に言ってのけた。
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