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ナナミちゃん、さっきあれほど否定したのに。
「すみません……ナナミちゃん、大丈夫、自分で何とかするから……」
田中さんに対して謝りつつ、ナナミちゃんを宥める。
田中さんも彼女の話はスルーしつつも「止めるように言おうか?」と言ってくれるけど、遠慮と恥ずかしさから「本当に大丈夫です」と断った。
「アヤさんじゃムリです!せっかくだから言ってもらったらいいじゃないですか〜。大体アヤさん優し過ぎるんですよ!」
「でもかなり冷たくあしらってるよ。睨んだりキツく言ったり、無視もしてるし……」
本当はかなり気が強いけど、外面の良い私。
会社ではいい人ぶっている。
そんな私でもさすがに永松さんに対しては本来の自分に戻り、キツい態度を取っているつもり。
でもやっぱり周りの目が気になって、冷酷になり切れていないのかな。
ナナミちゃんからすれば、どうやらまだまだ足りないらしい。
「あんなの生温いですよ!アヤさんに反応してもらって、逆に嬉しそうにしているじゃないですか。逆ギレするくらい攻撃するか、再起不能になるまでペッチャンコにしないと!
だから田中さん、『俺の彼女に手を出すな!』くらい言っちゃってくださいよー」
「ちょっとナナミちゃん!違うって言ってるでしょ!」
なんて事を言ってくれるの?!
声こそ小さいけれど、ちょっとキツめに叱った。
それでもナナミちゃんは「でも〜」とニヤニヤして、全然悪びれる様子もない。
いくら私たちの噂が面白いとしても、普段の彼女はここまでするような子ではない。
まずい、ちょっと飲ませ過ぎたかもしれない。これ以上余計な事を言わせないようにしないと。
上手く話を逸らさなきゃ……と思っていると、今度はもう一人が反応し出した。
「えっ?付き合ってるんですか?!」
「いや、そういう訳では……」
驚く重谷くんに、戸惑う田中さん。
「やだ〜重谷さん、ウワサになっているのを知らないんですかー?」
「ナナミちゃん、もうやめようね。田中さんに失礼だから!」
完全に弾けてしまったナナミちゃんに、火消しに躍起になる私。
そしてまたもや「すみません……」と謝り、田中さんは「困ったね」と笑う。
田中さんだってこんな事言われて、きっとどう反応したらいいのかわからないと思う。
「ウワサはちらっと聞いた事あるよ。だけど桜井はどうしたんだよ?」
その“もう一人”、重谷くんが余計な事をぶち込んできた。
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