恋の入り口?

9/28
前へ
/120ページ
次へ
ナナミちゃん、さっきあれほど否定したのに。 「すみません……ナナミちゃん、大丈夫、自分で何とかするから……」 田中さんに対して謝りつつ、ナナミちゃんを宥める。 田中さんも彼女の話はスルーしつつも「止めるように言おうか?」と言ってくれるけど、遠慮と恥ずかしさから「本当に大丈夫です」と断った。 「アヤさんじゃムリです!せっかくだから言ってもらったらいいじゃないですか〜。大体アヤさん優し過ぎるんですよ!」 「でもかなり冷たくあしらってるよ。睨んだりキツく言ったり、無視もしてるし……」 本当はかなり気が強いけど、外面の良い私。 会社ではいい人ぶっている。 そんな私でもさすがに永松さんに対しては本来の自分に戻り、キツい態度を取っているつもり。 でもやっぱり周りの目が気になって、冷酷になり切れていないのかな。 ナナミちゃんからすれば、どうやらまだまだ足りないらしい。 「あんなの生温いですよ!アヤさんに反応してもらって、逆に嬉しそうにしているじゃないですか。逆ギレするくらい攻撃するか、再起不能になるまでペッチャンコにしないと! だから田中さん、『俺の彼女に手を出すな!』くらい言っちゃってくださいよー」 「ちょっとナナミちゃん!違うって言ってるでしょ!」 なんて事を言ってくれるの?! 声こそ小さいけれど、ちょっとキツめに叱った。 それでもナナミちゃんは「でも〜」とニヤニヤして、全然悪びれる様子もない。 いくら私たちの噂が面白いとしても、普段の彼女はここまでするような子ではない。 まずい、ちょっと飲ませ過ぎたかもしれない。これ以上余計な事を言わせないようにしないと。 上手く話を逸らさなきゃ……と思っていると、今度はもう一人が反応し出した。 「えっ?付き合ってるんですか?!」 「いや、そういう訳では……」 驚く重谷くんに、戸惑う田中さん。 「やだ〜重谷さん、ウワサになっているのを知らないんですかー?」 「ナナミちゃん、もうやめようね。田中さんに失礼だから!」 完全に弾けてしまったナナミちゃんに、火消しに躍起になる私。 そしてまたもや「すみません……」と謝り、田中さんは「困ったね」と笑う。 田中さんだってこんな事言われて、きっとどう反応したらいいのかわからないと思う。 「ウワサはちらっと聞いた事あるよ。だけど桜井はどうしたんだよ?」 その“もう一人”、重谷くんが余計な事をぶち込んできた。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

990人が本棚に入れています
本棚に追加