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「えっ?!知らないよ!いつ?」
思わず声を張り上げてしまう。
そうちゃんが?
なんで?
嘘でしょ?
聞いてないよ!
頭の中が“?”でいっぱいになり、パニックになる。
「先々週だったかな。この近くで講習会があったとかで同じ支店の人とこっちへ来ていて、近くだからって帰りに上の人のところに挨拶に寄ったんだって」
「そうだったんだ……」
はっと我に返り冷静に答えてはみたけれど、心臓はバクバクと音を立てたまま。
先々週って、私、何をしてたっけ?
全然知らなかった。
「倉石部長の所に挨拶に来て、長いこと楽しそうに話し込んでたよ。その後もしばらくウチらのフロアーをうろちょろしてたけど、気づかなかった?」
倉石部長とはあの、前の支店で散々お世話になった方。そうちゃんとの付き合いを早い段階から知られてしまったけれど、ずっと温かく見守ってくれていた。
そして、そうちゃんが仕事面で大きく伸びたのは本人の努力はもちろんのこと、部長からの叱咤激励のおかげでもあり、そうちゃん本人もそう感謝していた。
部長は私と同じタイミングで本社に異動になり、またもや直属のトップ。
以前のように気安く話ができる環境ではなくなったけれど、何かにつけて声をかけてくれたりと、優しいのは変わらないまま。
ちなみに、そうちゃんとの関係が終わった事を話してはいないし、聞かれる事もない。
「確か遅い時間まで外出してたんだよね。入れ違いかな?」
その日は先方との打ち合わせが長引いてしまい、戻って来たのが残業時間に入ってからだった。
タイミングが悪過ぎる。
それにしても、私があのフロアーで働いているのを知っているはず。
一方的に関係を終わらせておいて、もし私と会ってしまったらどうするつもりだったんだろう。
そして私もどうしただろう。
ちょっと想像がつかないけれど、“会いたかった”という想いだけは強い。
「急だったから集まれる人だけで飲みに行ったんだけど、さすがにアヤちゃんには声が掛からなかったかー」
「そっか……みんなに気を遣わせちゃったんだね」
しれっと言ってはみたものの、本音は
“そんな気遣いいらなかった!”
どうして誰も教えてくれなかったの?と、心の中で八つ当たりする。
更に重谷くんの口から驚きの話が続く。
「その飲み会に田中さんも来てたけど、アヤちゃんには言うわけないか」
「うん、聞いてない……」
重谷くんの話だと、そのそうちゃんと一緒に講習会に来ていた人が、田中さんの知り合いという繋がりらしい。
私の知らない所でふたりが顔を合わせていたという事実に、何故か嫌な気持ちにさせられる。
田中さん、そうちゃんに私のことを何も話していないといいな……と思ってしまった。
「桜井、元気そうだったよ。でもちょっと雰囲気は変わったかな」
その言葉にほっとする。
そうちゃん、元気なんだ。
それなら良かった。
でもどんな風に変わったの?
良い方に変わったの?
その時の話、もっと教えて!
でも聞きにくい。
ためらっているうちに田中さんが戻ってきてしまい、それ以上何も聞くことができなかった。
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