恋の入り口?

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楽しくもあり、途中でかなり困惑した飲み会もお開きになった。 重谷くんやナナミちゃんとは路線が違い、改札付近で「お疲れさまー」と別れた。 田中さんとふたりっきり。 さっきのいろいろがあってのこの状況は、やっぱり照れ臭いのもあるけれど、何よりそうちゃんのことが頭から離れず、いつものように楽しくお喋りという訳にはいかなかった。 私の自宅は田中さんよりも手前。 電車内が混み合っていた事もあって、それほど話をすることもなく最寄り駅に着こうとしていた。 「今日はありがとうございました。楽しかったです。また明日……」 そうちゃんを思い浮かべたまま、ニッコリ笑って“楽しかった”なんて言えてしまう自分が怖い。 「もう遅いから送って行くよ」 そう言いながら、田中さんは当たり前のように一緒に電車を降りた。 個人的に食事に行くようになってから、田中さんは毎回自宅まで送ってくれていた。 もちろんその度にお断りしたけれど、なんだかんだで結局送ってもらい、大切に扱ってもらっているという優越感に似たような良い気分になっていた。 つくづくイヤな女だと思う。 「今日は大丈夫ですよ。まだ人が沢山歩いている時間ですから……」 それらしい理由でやんわりと断る。 本当は早く一人になって、このごちゃごちゃな気持ちを整理したいだけなのに。 「そういう訳にはいかないよ。心配だから送らせて」 「でも……」 そんなやり取りをしながら、ふたりでその電車を見送った。 頭の中では“そうちゃんが……”なんて思っているくせに、田中さんと目が合うと惹かれる想いを抑えきれず、結局はっきり断る事もできない。 ふたりの男性の間でゆらゆらグラグラ揺れまくる、どうしようもない私。 改札を出て、自宅までの数百メートルを並んで歩き出した。 ふたりっきりになると、やっぱり意識してしまう。 何を話したらいいんだろう。 さっきのナナミちゃんの話には触れるべき? それともスルー? 何も言えずにいると、 「さっきの話だけど……」 田中さんが口を開いた。 “さっきの話”? 心臓がドキンと大きく音を立てると、そのままドキドキと高速で波打ち始めた。
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