恋の入り口?

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“恥ずかしかったですね” と、可愛く照れてみせるか “ナナミちゃん、何言い出すんでしょうね〜” と、冗談っぽく言ってみるか。 頭の中を超高速で回転させたけど、無駄な迷いだった。 「永松にそこまでしつこくされてるなんて知らなかった。 ごめんね、気づかなくて。良かったらオレから言おうか?」 田中さんのその言葉で、すーっと冷静になる。 ああ、その話ね…… からかわれた照れ臭さと、何よりもそうちゃんの話のインパクトが強すぎて、そんな事はすっかり忘れていた。 「さすがにそこまでお願いする訳には……それじゃなくても変にウワサされちゃって申し訳ないのに……」 「まあ、永松への言い方はちょっと考えるけど、噂自体はアヤちゃんとなら光栄だよ」 最近の私ならそこで嬉しくなってしまうところだけど、今日に限ってはそういう事をさらっと言えてしまうところに“軽い……”と感じてしまうのは、正反対のそうちゃんがチラついているからなのかな。 「あの痴漢の話が独り歩きしてしまっているみたいで……」 「うん、知ってる」 「そうなんですか?!」 「たまたま小耳に挟んでね。まあ、その手の話はみんな好き勝手にいうからね」 田中さんは余裕そうに笑う。 知らなかったのは私だけだったんだ…… でも例えそれがただの噂でも、私がそれを聞いてしまったら、きっと他人の目を意識し過ぎて仕事の話すらしづらかったと思う。 あれから少し経っているし、そのうちみんなもそんな噂話に飽きるだろう。 知らずにいて良かったのかもしれない。 自宅マンションはもう少し先。 まだまだ話は続く。
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