不満

2/7
989人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
「式場、そろそろ決めないとヤバいよなー」 電話の向こうから聞こえる呑気な声。 “私はもうずーっと前から相談してるよ!決めてくれないのはアナタですけど!!” そんな不満は隠して 「そうだね」 と一言。 でも、“一応結婚式のことは気にかけてくれてるんだ……” と、ちょっと嬉しくなる。 今が一番大変で忙しいんだもん。それだけでも良しとしなきゃね、と気を取り直す。 ……が、次の瞬間、私をイラつかせる一言が彼の口から発せられる。 「どこか良いところ見つかった?」 またもや呑気な言い方。 ねえ、『私たちの』結婚式なんじゃないの? なんだか他人事みたいな口ぶりにがっかりさせられた。 「そうちゃんは私が気に入ったならどこでもいいんでしょ?適当に探すから決まったら言うね」 “適当に” つい嫌味ったらしい言葉が口をつく。 「うん。でもさー、アヤちゃんばっかりじゃ大変だろうし、一緒に考えようよ」 もう!私任せると言ってみたり一緒に考えようと言ってみたり、一体どっちなの? 何度相談しても「わからない」やら「アヤちゃんが気に入ったなら」ばかりで、全然一緒に考えくれないじゃん! 楽しいはずの結婚式の話なのに、ストレスは溜まる一方だった。 きっとそんな私の不満が伝わったのだと思う。 翌朝、いつもの “おはよう” 続いて “今週末そっちへ帰るから、一緒に式場を回ろう” と、LINEが来た。 私はただ、わからなくてもいいから一緒に考えて欲しかっただけ。 もちろん一緒に見て回れたら嬉しいけれど、疲れた身体を休める貴重な週末に長距離移動させるのは気が引けた。 そうちゃんには 「気持ちは嬉しいけどムリしなくても大丈夫だよ」 と伝えたけれど、その週末、彼は東京へ帰ってきた。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!