恋の入り口?

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(※このページの前に2ページ差し込みました。) 永松さんは相変わらず馴れ馴れしく、あからさまに冷たくあしらっているのに全然響かない。 いい加減ウンザリしていた。 そのうちそれはエスカレート。 「今度食事でもしながらゆっくり話さない?」 かなり嫌な態度を取っているにもかかわらず、全然懲りていないらしい。 ついに誘われてしまった。 「食事ですか?行く訳ないじゃないですか」 私も良くなかったと思う。言葉を選ぶべきだった。 でも話しかけれる事自体が相当なストレスになっていた私は、咄嗟に感じ悪くお断りしてしまった。 どうやらこれが永松さんの気に障ったらしい。 これをきっかけに、永松さんには今までとは違ったしつこさで、嫌がらせのように付き纏われるようになってしまった。 何だか執念のようなものを感じて怖い。 .................................................................... あの日は田中さんと食事に行く約束をしていたけれど、他の社員の目が気になる私は、現地での待ち合わせをお願いしていた。 仕事を終えると、少し大きめの声で周りの社員に 「お先に失礼しまーす」 と言って、隣の課に座る田中さんに“先に向かいます”のアピールをする。 少し前にスマホを開いてLINEを確認したけれど、田中さんからは何も連絡は入っていなかった。 という事は、予定どおり仕事は終わるのだろう。 きっと田中さんも時間差で会社を出ると思う。 私は急いでロッカールームに向かい、丁寧に、でもやり過ぎないようにメイクをお直し。お気に入りの香水をほんの少しだけ身に纏って、エレベーターに乗り込むと…… 一緒に乗り合わせた社員数人の中に永松さんの姿があった。 また何か言われるかもしれない。 もう関わりたくない。 一階に着き、扉が開くと同時にエレベーターから逃げ出した。 せっかく整えたメイクも髪型も乱れてしまうけど仕方がない。 小走りで駅に向かい、ホームに着いたところで振り返る。 辺りを見回してみても、永松さんの姿はない。 さすがに追いかけては来ないか……よかった。 安心して電車に乗り込んだ。 今日は和食のお店だと聞いている。 お料理はもちろん楽しみだけど、今日は田中さんからどんな話が聞けるのかな、何を話そうかな、と考えるだけでウキウキしていた。 そして車窓に映る自分を見ながら身だしなみの最終チェック。 メイクは大丈夫そう。 髪の毛はちょっと乱れてるかな? 毛先をそっと撫でて整えた。 そんなこんなで地下鉄に揺られること十数分。目的地に到着した。 改札を通り抜け、階段を登って外へ出る。 待ち合わせ場所は駅からすぐの、某大学裏の目立たない場所。 そこに向かって歩き出した時だった。
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