恋の入り口?

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どうしてここまでこの人に言われなきゃならないの? それに、そもそも田中さんと付き合っている訳ではないし、“他の男”って一体誰の事? 「あの…それは勘違いです……私、そんなこと……」 言いたい事はたくさんある。 でも恐怖で足がすくみ、これだけ言うのが精一杯。 でも永松さん(この人)はそんな私の様子を楽しむかのように“フンッ”と鼻を鳴らし、私を蔑むような目で見ると、こう続けた。 「勘違い?俺は見たよ。前にその男と一緒に駅にいたよね」 永松さんは『前に』『駅で』他人とぶつかり、持っていた傘が飛ばされ、その傘を『男と一緒にいた』私が拾って渡したのだと言う。 ……思い出した。 あれは確かユウキ、ユカ、近藤くんと飲みに行こうと私の勤務先の最寄駅前で待ち合わせをしていて、早めに着いたユウキと一緒に二人を待っていた時だった。 私は足元に飛んできた傘を持ち主の男性に渡した。 何故覚えているのかといえば、その後ユウキが「さっきの男がずっと(遠くから)こっちを見てるけど知ってる人?」と聞いてきたから。 もしかしたら同じ会社の人かな?とは思ったけど、見たこともない人。何だか気味が悪いなと思った記憶が。 そういえばユウキにも「ちょっと怪しいから気を付けた方がいいよ」と言われたっけ。 「あの時の……」 「へぇ、本当は覚えてるんだ。この前『あの時はありがとう』って言ったのにわからないフリしてたんだね」 この前突然話しかけられた時に言われた『あの時はありがとう』って、その時の事……? 待ち合わせしていただけで彼氏認定するの?あの後すぐに近藤くんも来たのに。 そもそも本当に彼氏だったら、そんな目立つ所で待ち合わせなんてしない。 その傘の話って随分前のこと。 いつから私はこの人に認識されていたんだろう。 怖い。怖すぎる。 “助けて!” そんなSOSと同時に頭に浮かんだのはあの男性(ひと)だった。 恐怖で何も出来ず、心臓はバクバクと打ち付け、脚はガクガクと震えながら、“ あの男性(ひと)”の顔を思い浮かべて助けを求める。 そんな時、 「何してるんだよ!」 近づいて来た男性が大きな声を出した。
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