989人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
翌日。2つの式場を見学。
そうちゃんは物珍しげに式場内をキョロキョロと見回し、完全に “ボク、よくわかりません” “とりあえず彼女に連れて来られました” 感たっぷり。
でもスタッフの方が説明する度、熱心に耳を傾ける。
こういう真面目なところがそうちゃんらしい。
1ヶ所目は「こんなもんかなぁ……」という彼の反応。何を基準にしているのかよくわからないけれど、あまり気に入らなかったらしい。
ただ2ヶ所目はちょうど試食会の日で、お料理が美味しかったこともあって彼の反応は上々。
出された見積もりを見ても、何かと追加になったとしても予算的には何とかなりそうな額。
もう、ここでいいかな……
式場を決めること自体が目標になってしまっていた私。
そうちゃんの良い反応と無理をさせたことも相まって、私自身はそれほど気に入った訳ではないのに気に入ったフリをしてこの式場を仮予約。
無事式場が決まり、そうちゃんはほっとした様子で赴任先へ帰って行った。
もうあの式場に決めてしまおう。
正式に予約しようとしたちょうどその頃、そうちゃんの親族が急逝したとの連絡があった。
彼や彼の両親にとても近い親族。
彼も急なお別れにショックを受け、私も何度かお会いして良くしていただいていたし、私たちの結婚を喜んでいただいただけに悲しかった。
とても結婚式どころではない。
当然、仮予約もキャンセル。
彼の両親は気にしなくていいとは言ってくれたけど、私の両親が嫁いだ後の私の立場を考え「他の親戚がどう思うかわからないから」と心配し、結婚も結婚式もしばらく延期せざるを得なくなった。
結婚が決まってからいろいろあり過ぎる。
なんでこんなに上手く事が運ばないのだろう…
でも焦って決めなくて良くなった分、これからそうちゃんと一緒にゆっくりと本当に気に入った式場が探せる。
そう思ったらご不幸があっての事なのに、不謹慎ながらほっとしてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!