不満

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「えっ?結婚決まったの〜?」 ちょうどキッチンでお茶を用意してくれていたエリカが、カウンター越しに少し驚いた声でニコニコしながら私を見る。 「うん、一応ね……」 「おめでと〜!例の同じ会社のカレと?」 「ありがとう。うん、そうだよ」 本当はもっといろいろと決まってからふたりには報告したかったけれど、私も結婚が決まり浮かれているんだと思う。 聞かれれば素直に答えてしまう。 そこで突然、赤ちゃんをあやしつつ女子の話の聞き役だった藤崎くんが話に入ってきた。 「そっかー。でもアヤちゃんは、あのままユウキと結婚するのかと思ってたけどなー」 「あはは…懐かしい名前出すねー。残念ながらご縁はなかったみたいだよ」 今はこんな風に冗談ぽく言えるくらい、ユウキとの事は遠い想い出になっている。 あれからユウキとは会っていない。 久しぶりに名前を聞いて、そういえば元気かなぁと思い出す。 「そうそう、この前アイツらと飲んでさー。ユウキも元気だったよ。相変わらず忙しそうだけど、仕事は上手くいってるみたいだね」 「そうなんだ。それは良かったね」 「アヤちゃんが転勤でまたこっちに戻って来たって言っちゃった」 「も〜!ちょっとそれ、いらない情報だから!」 すかさず藤崎くんにつっこみ、本人は苦笑い。 もうユウキとは過去のこと。 私もわざわざ知らせようとは思わなかったし、聞かされたユウキだって「そうなんだ」としか言えなかったと思う。 「他のヤツらも “じゃあ今度から飲み会にも呼ぶか!” って言ってたよ」 「あはは、ありがとう。じゃあそのうちね」 一応お礼を言ったけど、元カレのいる飲み会になんて行きにくい。 私は気にしないけれど、そうちゃんの気持ちを思えば気が引ける。 誘われてもたぶん行けないと思う。
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