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「で、結婚式はいつなの?」
用意してくれた紅茶を持って、エリカがリビングへ戻ってきた。
「それが……」
私は、年内に結婚式をするつもりだったけれど式場がなかなか決まらなかったこと、やっと決まったのに延期することになったことなどを簡単に説明した。
「そっかー、それは大変だったね。でも延期も辛いね」
「仕方ないよ。でも時間ができたから今度はふたりでゆっくり探そうと思って。
〇〇(式場)に決めたのだって彼が全然相談に乗ってくれなくて、やっとふたりで見に行った時に彼の反応が良いからって決めちゃったし……」
そこからそれまでの経緯を愚痴交じりに話す。
他人にはきっと惚気にしか聞こえないと思うけど、私にとってはかなり真面目な悩みや不満。
ユカもエリカも私に同調してくれる。
ただ一人、藤崎くんだけは途中から苦笑いし出して、私が話し終えたところで「わかるわー、彼氏の気持ち……」と呟いた。
エリカはその言葉に反応し藤崎くんを一瞥すると、私に向かって
「そんなこと男に期待しちゃダメだって!ウチだって全部私に丸投げで何にもしなかったよー。もう結婚自体やめようかって何回も思った」
ため息まじりに話した。
「藤崎くんでも?」
藤崎くんはキャプテンをしていただけあって、グイグイ引っ張っていくイメージがある。そんな藤崎くん、ちょっと意外で驚きだ。
「何を聞いても “わかんない” “エリカがいいなら良いんじゃない?” ばっかり。頼んだことも全然やらないし、あの時ほど使えな…いや、頼りにならないと思ったことはなかったよー」
もう一度冷めた目で藤崎くんを見るエリカにつられ、私とユカも同じようにちらりと見ると、藤崎くんはタジタジになりながら言い訳をし始めた。
「だって本当にわかんないし、俺が一言 “こうしたらいいんじゃない?” なんて言ったら、それは違うとか何とか全部ダメ出しだよ?やる気無くすって!
でもね、男なんて彼女がやりたいようにやってくれたらそれでいいんだよ!」
「でもふたりの結婚式じゃん?」
私の一言に「ねー」とふたりが賛同し、女子3人で総攻撃。
藤崎くんは劣勢になりながらも反論をやめない。
「まあ、そうなんだけど!
でもやっぱりエリカの為っていうか、なるべく希望どおりにしてあげたいとは思ってたよ!彼氏だってきっと同じように思ってるって!」
「だったら一緒に考えて欲しいじゃん?ふたりで準備するのが楽しいんだよ!」
「でもさー、何言っても結局却下じゃん?」
「そんなことないって!」
そんな感じでしばらくの間、女3人 VS 男1人の戦いが続いた。
私はそうちゃんの意見にダメ出ししたり却下したつもりはないんだけど……そもそも意見なんて何も言ってくれなかったし。
でも男性って皆そんな感じなのかな。
じゃあ結局そうちゃんが近くにいても忙しくなくても、あまりアテにはならないってこと?
そうちゃんなら余裕さえあれば、一緒に考えてくれるって期待していたんだけどな。
“仕方ない、男なんてそんなもの” という諦め半分と、 “そうちゃんは藤崎くんとは違う!” という期待半分の、複雑な気持ちになった。
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