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その日は久しぶりの三浦くんを囲もうと本社内の同期で飲みに行くことになっていて、その席で三浦くんにそれとなく聞いてみることにした。
「フットサルチーム作ったのって三浦くんなんだねー」
「そうなんだよ。結構ギリギリの人数でやってるからさー、桜井が転勤してきてくれて良かったよ。アイツ、やっと研修も落ち着いたじゃん?即戦力だから助かったよ」
三浦くんは上機嫌でジョッキのビールを飲み干した。
ちょっと待って。
落ち着いた?
え?どういうこと?
そんなこと一言も聞いてない!
突然聞かされた話に心臓がバクバクし出し混乱する。
それでも動揺を必死に隠し三浦くんに話を合わせていると、どうやら研修は一旦区切りがついて、赴任先で通常業務にあたっていることがわかった。
その他に、上司や先輩からも気に入られているらしく、しょっちゅう誘われて食事や飲みに行ったり、単身赴任の上司の家にみんなでお酒を持ち寄って夜遅くまで酒盛りをしていることまで教えてくれた。
三浦くんには「きっと桜井もさみしいんだよ。たまにはこっちにも来てやれよ」とまで言われてしまう始末。
そうちゃんは1ヶ月に一度は会いに来てくれた。
私が会いに行くと言っても「遠いから大変だよ」「時間がある時くらいはアヤちゃんのお父さん達にも挨拶しなきゃ」と言って、それはなかなか叶わなかった。
私はその言葉を素直に受け取り、忙しいはずの彼にばかり負担をかけていることを申し訳なく思っていた。
そして、こちらへ帰って来る度私の実家へ顔を出してくれる彼に心から感謝をしていた。
でもそうちゃん、余裕がないどころか私の心配を余所に楽しんでいる。
それからあんなに毎日してくれた電話。
いつの間にかLINEだけの日が増えていた。
「明日から研修で出張だから、みんなと飲みに行ったら電話できないかも」
「昨日は疲れて寝落ちしてた」
などなど、今思えば出張だという日は電話がかかってこなかった気がする。
私は疲れているのだと思って深く聞いたりはしなかった。
でもそれってもしかして嘘を隠すためなの?
衝撃的な話に目の前が真っ暗になった。
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