989人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ、研修のテキスト?」
部屋に置かれたテーブルの上には、分厚い本や資料が無造作に山積みになっていた。
どの背表紙のタイトルを見ても難しそう。
「うん、そうだよ」
「家でも勉強してるの?」
「あはは。積んであるだけだよ。
一人じゃすることもないからたまーに見ることもあるけどね」
そうちゃんは置かれたテキストに軽く手を乗せ、パラパラ…とめくった。
そうは言うけど、読み込んでいるのはテキストの少しヨレた感じからわかる。
一生懸命勉強している証拠。
「でも資格もいくつか取らなきゃならないんでしょ?勉強しなくていいの?私と遊んでいて大丈夫?」
「思い出させるなよー。大丈夫、何とかなるよ」
「うわぁ余裕じゃん!
さっすが〜!そうちゃん、頭良いもんね!凄いなぁ。私には絶対無理だもん」
「プレッシャーかけるね〜。でもまあ思ってた程大変じゃないよ……なーんて余裕かましていてダメだったりして」
褒める私のおでこを軽くツンツンすると、今度は自嘲気味に大きく口を開けてケラケラと笑う彼。
まあ頭も良くてコツコツ努力型のそうちゃんなら、きっと大丈夫だと思うけど…
思っていたより余裕のある様子に安心した。
この様子なら言っても大丈夫かな。
実は今回、そうちゃんに言おうと思っていることがある。それは、
“やっぱりそうちゃんのそばにいたい”
ということ。
1カ月離れて暮らしてみたけれど、そうちゃんのいない毎日はやっぱりさみしかった。
そしてユウキとの失敗がトラウマになっていたのか、漠然とした不安がちらつくこともあった。
彼の今後に繋がる大切な時だから邪魔はしたくないけれど、もし少しでも余裕があるならば、たとえひと月に数日だとしても一緒にいたい。
でもそうちゃんのことだから、突然言ってもきっと「そんなことさせられない」と返される。
彼の様子を伺いつつ、話を切り出すタイミングを探ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!