揺れる想い

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居酒屋を出て時計を見ると、ちょうど21時を過ぎる頃だった。 明日は日曜日。もう少し遊ぶ時間はありそう。 程良い酔いも手伝って「もう一軒行く?それともカラオケにでも行く?」なんて、機嫌良くお喋りしながら歩き出す。 ユウキも私もカラオケが大好き。 私の歌唱力はさておき、ユウキは声も良いし歌唱力も抜群。 好きになった理由のひとつが歌声だと言っても過言ではなく、付き合っていた頃は、当時大好きだったアーティストの歌をリクエストしては歌ってもらい、その美声にウットリしていた。 再会してからも、たまには一緒にカラオケボックスに篭り、ストレスを発散している。 ただ今日は何となくユウキの口数が少ない気がして、疲れてるのかと思った私は「やっぱり今日はもう帰ろうか?」と気遣ってみる。 すぐに返事はなく、これは帰宅コースかな……と思ったその時、 「アヤさー、一応聞くけど、他の人と飲みに行っても飲み潰れる事はあるの?」 ユウキの答えになってない言葉が返ってきた。 「も〜心配しなくても大丈夫だって!ちゃんと考えて飲んでるから〜」 最近は、飲み過ぎることはあっても潰れる事はなくなっているし、今日だってそれほど飲んでいない。 そんな事より次はどうするの?やめておく? そんな気持ちが、笑い混じりの軽い返事になって表れる。 次の瞬間、 「そうじゃなくて、そうなる事もあるのかって聞いてるんだよ!」 ユウキは荒々しく言い放つと私の肩に掴むように手を置いて、機嫌良く軽やかに歩く私の足を止めさせた。 余りにも荒っぽく、驚いてユウキを見上げると、怖い顔をしてこちらをじーっと睨むように見ていた。 何か怒らせるような事をしたかな。 ユウキの突然の変貌ぶりに戸惑ってしまう。 「何もそんなに怒らなくても……最近はおとなしくしてるから心配しないでよ。今日だってあんまり酔ってないでしょ?」 両腕を軽く広げ、「ほら、このとおり」と言わんばかりにアピールしてみせる。 ユウキもそんな私を見ていつもの顔に戻ると、肩の手をゆっくりと下ろした。 「それならいいけど……頼むから飲み過ぎはオレと一緒の時だけだからな!ダラダラと飲み歩くのも禁止だからな!だいたいこれだけ飲みに付き合ってるんだから、他の奴と飲む時くらい我慢できるだろ?」 先ほどとは一転、私を諭すように落ち着いた声になったかと思えば、 「オレだったらちゃんと送って行くんだし、間違いはないんだから……」 と、今度はボソボソブツブツ不機嫌そうに話す。 原因はわからないけど、言葉の端々からイライラしているのが伝わってくる。 「急にどうしたの?」 「何か危なっかしいんだよ」 「もうそんなに言わなくてもわかってるって!ちょっとは信用してよ」 ユウキの苛ついた言葉に、私もついつい語気が強くなった。 「信用するとかしないとかじゃなくて、いくらアヤが気をつけていてもダメなんだよ!アヤは他人を信用し過ぎなんだよ!とにかく約束だからな!」 「もう、わかったってば……」 言い返したい事はたくさんある。でもこれ以上言っても口喧嘩になるだけ。 それも面倒で、珍しく私は引き下がった。 心配してくれるのはありがたいけど、今日は何だかんだと口煩くて、ちょっとお節介が過ぎるとすら感じてしまう。 しかも理由もわからず急にそんなにイライラされても、私だって困る。 突然のユウキの変化に困惑した。 結局険悪な空気は変わらず、その日はそのまま家路についた。
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