恋の入り口?

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真面目な話? なんだろう…… 「はい……」 突然ピンと張り詰めた空気と田中さんの言葉に戸惑いながら、小さく返事をした。 田中さんは言葉を選ぶように、ゆっくりと口を開いた。 「アヤちゃんはオレに対して、手当たり次第女の子に手を出してるってイメージを持ってるのかもしれないけど……確かに周りからそういう扱いされてるし、否定もしてこなかったけど、今の話みたいに事実じゃない事も結構あって。 もちろん調子に乗ってた時もあるし、傷つけた子もいると思ってるよ。でも今は……アヤちゃんにだけは信用して欲しいって思ってる」 その少し緊張感のある声と話の内容に、心臓の鼓動が猛スピードで加速する。 田中さんの目力に吸い寄せられ、目を逸らすことができない。 「噂はいろいろ聞いてますけど……でも田中さん、昔と比べて凄く変わったなって思います。今は信用しています」 「ありがとう……ごめん、急にこんな話をして。勤務時間中なのにね」 「いえ……」 田中さんがあまりにも真剣な顔をして話すものだから、それ以上どんな言葉を返せば良いのかわからず、逃げるようにそのままテーブルに視線を落とした。 “ アヤちゃんにだけは信用して欲しいって思ってる” それはどういう風に解釈すればいいの? 良いように考えていいの? それともこれは計算なの? 田中さんの気持ちが読めない。 でも“計算”なんて言葉が出てくること自体、やっぱり私は信用していないのかな。 ……いや、違う。 そう考えることで、気持ちにブレーキをかけているんだと思う。 最近はあのしつこくされた時の手慣れた感じがないどころか、隙があったり、今みたいに余裕が感じられなかったり。 そして、普段から仕事のことはもちろんのこと、それ以外の場面でも気にかけて声をかけてくれたり。 そんな人間味が感じられる今の田中さん。 それから下手に誤魔化したりせず、昔は悪かったとちゃんと認めるところも含めて信じることができる。 そろそろ心のブレーキが壊れるかもしれない。
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