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彼の嘘と本心
そうちゃんは忙しい毎日を送っていた。
研修やらレポート?課題?などの日々の勉強はもちろんのこと、研修の合間には当然仕事もしていて研修先と赴任先を往復。それに加えて私に会いに来る。
電話もLINEも毎日欠かさない。
そして、
“今日はどうだった?”
“体調は大丈夫?”
“困ったことはない?”
“何でも聞くよ?”
これでもかというほど私を気遣う。
それは彼の元々の優しさや自分の身内の都合で結婚式を延期したことに負い目を感じているからこその気遣いだと思っていたけれど、本当はそれ以上に彼なりの想いや悩みからくるものだった。
でも私はそんなこととはつゆ知らず。
ただ、今まで以上に私に気を遣っているのはわかっていた。
私には「オレは大丈夫だよ」と明るく振る舞うけれど、忙しい毎日に疲れているのは間違いない。
彼にはこれ以上私に構わず自分の事に集中して欲しかった。
「さみしい思いをさせてごめんね」
そう言うそうちゃんに、私は強がってみせる。
「全然大丈夫だよ。
仕事も楽しくなってきたし、毎日があっという間!そうちゃんは自分の事だけ考えて」
「オレはちゃんとやってるから大丈夫だよ」
そんな彼に心配をかけたくなくて、そしてそれによって無理をさせたくなくて私は仕事が楽しいことをアピールするようになり、それが彼を新たに悩ませていることに私は気づいていなかった。
確かにやりがいのある仕事。
ある程度任されるようになって、ちょうど楽しくなってきたところだった。
正直言って、仕事を手放すのが惜しい気持ちがないと言ったら嘘になる。
そして仕事が忙しい分、さみしさを紛らわせることもできた。
でも私にはそうちゃんとの生活の方が大事。
私は研修が落ち着く前に、彼のそばに行こうと決心した。
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