episodeー鼓動

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「ほんとに? 伊織、本当に?」 彩華が胸にしがみつく。ぽろぽろと零れ落ちる涙を見ていると胸の鼓動が早くなる。  彩華の髪をそっと撫でる。ゆっくりと背を撫でて泣き止むのを待つ。 「ばかだな、あんな言い方をして」  「他の女性と暮らしているって……」 だったら、セフレでもかまわない。女性の思考の先は理解をしにくい。 「大切にしなきゃだめだよ」 俺は沙羅を抱きしめて眠りについた。彼女が來斗に心を残していると気が付いていたから。 「伊織」 彩華の顔が上を向く。指先が俺の唇にふれる。 「彩華、それはいけないって……」 瞬間、彩華の顔が動く。合わさった唇はすぐに離れる。 「伊織が好きなの」 貴方に抱かれたいの。彩華の唇がつぶやく。媚薬の様な言葉に高鳴りはさらに鼓動を早くする。  抗えない衝動を抑える為に、深く深呼吸を重ねた。
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