209人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさい、勝手に入らせてもらって」
「何か、急用でも?」
ビジネスを立ち上げたあと、彩華の父親の会社とも繋がりを持った。問題無く取引の終了は済んだと報告を受けている。
「彩華、こちらに」
応接室へ案内をし、淹れたての珈琲を手渡す。よく見ると彩華の長い髪は濡れている。
「雨が急に降り出したものだから」
「雨宿りで此処に来たの? 俺はまだ、仕事が残っているから」
濡れた髪をタオルで拭う。彩華の細い指先が、応接室を出ようとした俺のシャツの背を掴む。
「待って、伊織」
「彩華?」
学生時代、彩華に憧れを抱いた事はある。想いを告げる機会は無く、そのまま卒業をした。彩華には既に婚約者がいると有名な話だった。
最初のコメントを投稿しよう!