207人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「すまない、いきなりこんな真似をさせて」
七緒の腕を掴み立たせる。まだ呆然とする様子に仕方なく椅子に座らせる。
「美人だし目力めちゃくちゃ強いし、ドキドキしちゃいました」
沙羅に似ているところがあると思っていたが、どうやら七緒の方がよく話す。その朗らかさにホッとしている自分に気が付く。
「帰りは送ろう。お礼は食事でいいかな」
残した仕事は日を改めよう。スーツの上着を腕にかけて七緒を誘う。
出入口で足を止めて君が振り返る。
「亜城さん、お礼してくれるんですよね?」
「あぁ、食事よりプレゼントが希望?」
扉の外へ二人で出ると、君は両腕の指で俺の片腕を掴む。
「ちょ、七緒さん!」
つま先を立てて俺の頬に口づけをする。
「こ、これで十分です。お疲れ様でしたっ」
バタバタと走り去る背中が可愛らしい。胸に空いた隙間にあたたかな風が吹いた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!