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episodeー激情
彩華を受け留める事はできない。迷いがある中を進むべきじゃない。
「こんな格好では帰れないわ」
「服が乾くまで待つ?」
「伊織の部屋に行きたい。伊織の言葉を信じたいの」
共に暮らす女性はいない、それを確かめたいと彩華が言う。
これ以上、彼女を受け入れる事には躊躇いがある。
「お願い、わがままを叶えて」
「わかった、うちで服を乾かそうか」
自宅マンションに彩華を連れて行く。素足がやはり気になるのか、彼女はソファではなくラグの上に座り込む。
「本当に一人なのね」
「あぁ、部屋が無駄に余っているよ」
辺りを見渡して彩華は肩で小さく息をつく。
「伊織、この前の言葉は訂正するわ」
「偽りの恋人ってやつ? そうだね、あんな言葉は彩華には似合わないよ」
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