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第10話
第10話:好きになること。
私の住んでいるところでは、雪はあまり降らない。降ってもせいぜい10センチメートル程度で、どれだけ寒くても、お昼前には溶けてしまう。
でも、わずかな間だけど、朝の日の光を浴びて、白く輝く地面を観るのは好きだ。
2月のはじめにはママの誕生日がある。ワカと私の誕生日がそうだったように、お誕生日の週のはじめに笛吹さんがきて、料理をごちそうしてくれてから曲を演奏してくれていた。今年のママの誕生日当日は、私が料理を作ると決めていた。
冷蔵庫に常にある材料で作れそうなもの。私が作ったのは親子丼とわかめと豆腐のお味噌汁。こっそりとエリちゃんに調べておいてもらった。
お誕生日当日、お仕事帰りのママの驚いた顔は、私は忘れない。自分のママながら、なんてかわいく驚くのだろうか。私の作った親子丼の味はまあまあだったけど、ママは美味しいと言って食べてくれた。ママへの私からのプレゼントは、肩たたき券とお皿洗い券と朝ご飯準備券をそれぞれ10枚。
ワカからのママへのプレゼントは、ワカが描いたお花の絵だった。
「ありがとう。」
と言って、にっこりと笑うママのこの笑顔が大好き。
ママのお誕生日が終わると、バレンタインデーが近づく。
私は、カイくんがかっこいいと思う。
サッカーを頑張っているカイくん。懇談会で、サッカーへの気持ちをみんなに教えてくれたカイくん。一生懸命に頑張っているその姿は、とてもかっこいくて好きだ。
私は、使わずにおいておいたお年玉で、ミルクチョコレート、生クリーム、ココアパウダー、お菓子を入れる用の紙容器とラッピングのリボンと包装紙を買った。
作るのは、生チョコだ。
小さめのお鍋で生クリームを沸騰直前まで中火で温めて、そこに刻んだミルクチョコレートを入れて、溶けて混ざってクリーム状になったら、それをシートを敷いておいたバットに流し込んで、1時間冷蔵庫で冷やす。冷蔵庫の中で固まったら、バットから取り出して、包丁でサイコロ状に切って、そこにココアパウダーをまぶせる。あとは箱型の紙容器に入れて、かわいいラッピングをすれば完成。
そして、バレンタインデー当日、胸のどきどきを止めることができなままだった私が、結局渡せないまま泣いて帰ってきて、そのうちに帰宅したママに事情を説明して、車でママにカイくんの家の前まで送ってもらって、どうにか渡せたときも、胸のどきどきが止まらなかった。
その後、カイくんがちゃんと食べてくれたかどうかは、わからないまま。でも、ワカとママの分もと作り置きしておいた生チョコの味はそこそこ美味しかったから、きっと口に合わないことはないはずだ。
どきどきして、苦しいこともあるけれど、人を好きになることはダメなことじゃないよね。きっと。
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