第3話

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第3話

第3話:雨の次の日  今日は雨。昨日も雨。明日も雨予報だ。しとしとする少し肌寒い感じと、この空気が重い感じは、まもなく梅雨入りなのかなと思ってしまう。  と言うか、気象台の発表がないだけで、もう梅雨に入ってるんじゃないかと思う。  雨の日は外出時は傘や長靴の雨具がいるし、外で遊べないし、服も乾かないけど、窓から見える植物たちの空から降ってくる水をたくさん飲んでいるところをみるのは好きだ。 みんな一生懸命に生きてるんだなって思うと、すごくたくましく感じる。それに、優しい雨音を聞くの大好き。  一昨日は、雨の中、ママの友人が遊びに来てくれていた。その人は笛吹で、私の家に来てくれた時には、笛を吹いた後に、夕ご飯を作ってくれる時もある。昨日もそんな日だった。笛吹さんは、オムライスとポテトサラダと、デザートにハート型に切ったリンゴをごちそうしてくれた。 おいしい。  きっとそれはママの味付けとは違うから、それが新鮮なのもあるけど、誰かが私たちのために作ってくれるのが嬉しい。でも、本当はママの料理が一番好き。食事の後で、「ワカちゃんおめでとう!」と、また笛を吹いていた。  昨日は、おばあちゃんの家で、夕ご飯をごちそうになる。おばあちゃんはエビフライとタマゴスープ、そして、近くにあるおいしいパン屋さんのバケットをご馳走してくれた。美味しかった。おばあちゃんは嬉しそうだった。   そして今日、目覚ましのベルで目が覚めると、小鳥たちのさえずりがきこえていた。昨日の天気予報は外れたようだ。窓を開けると、見事な青空が広がっていた。柔らかい朝日。雨で洗われた空の色。 すこしむせ込むような熱気をはらんだ空気。雨の後の晴れた日の特有の雰囲気だ。木々も、草花も、濡れていた葉っぱや幹が、日の光を浴びてみずみずしい緑色に輝いている。初々しい新芽とは違うこの芯のある強さは、とてもきれいだ。 私は、雨の後のこの朝の風景がとても好き。  今日は、梅雨に入る少し前の土曜日。ワカの誕生日だ。ワカのプレゼントにと、先週にママと一緒に選んだお姫様なりきりセットの中身は、どこかのお姫様が着ている深緑色のドレスと、キラキラのティアラ、そして柄にピンクのハートがついている鏡とブラシが入っている。ケーキは、ワカの大好きなイチゴがたくさん載っているホールケーキにした。  日中はワカとママと私でお出かけした。澄んだ空気がとっても美味しかった。大型ショッピングモールで、お買い物をして、みんなでフードコートでお昼ご飯にした。ワカとママはおうどんを食べた。私はタピオカミルクティのみを頼んだ。夜ご飯に備えて、お昼ご飯はなるべく少なめにしておいた。  帰宅してから、ママと一緒にご飯を作った。今日のメニューは、ワカも私も大好きなペペロンチーノだ。我ながら、美味しくできたと思う。でも、冷蔵庫に大好きなイチゴのケーキがあることを知っているワカには、それしか目に入らない。 ペペロンチーノを2口だけ食べて、後は「ケーキ、ケーキ、イチゴのケーキ」と歌い始めている。「ケーキはもう少しパスタを食べてからね。」と言うママの声は、ワカひとりの大合唱にかき消された。  根負けした私とママは、ペペロンチーノは明日の朝ご飯とする事にして、今からケーキを食べることにした。  満面の笑顔で、生クリームを顔いっぱいにしてイチゴをほおばるワカは、とてもかわいい。しばらく夢中になって食べていたけど、おなかいっぱいになってきたワカは、お皿の上に切り分けたケーキが半分以上残っていたけど、そこにイチゴがなくなったことによって興味を失ったようだ。 それから、プレゼントのお姫様なりきりセットを開封したワカの目はとてもキラキラしていた。ママの手を借りて、深緑のドレスと銀色のティアラをつけたワカはとても嬉しそうに笑った。  私の大切な妹。ママと私の大切な宝物。  今朝みた風景。雨で濡れていた葉が、日の光を浴びてみずみずしい緑色に輝いている。初々しい新芽とは違うあの芯のある強さは、ワカそのものだ。 ワカ、4才のお誕生日おめでとう。 
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