第8話

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第8話

第8話:クリスマス  今日のアドベントカレンダーのプレゼントは、レーズンクッキーだった。 私はアドベントカレンダーなんて今年の11月の終わりまで知らなかった。ママとワカとでK市の街中に行って、デパートのクリスマスシーズンのコーナーで買った。 図書館にあるような分厚い本の形をしていて、立てておいて中央のリボンを開くと、左側にもみの木のかわいいイラストがあって、右側には12月1日から12月24日までの緑色や赤色のボックスがあって、星やステッキや雪の結晶の切り絵がそこかしこに張ってある。 昨日空けたボックスからは、サンタさんのトナカイが曳いてそうなソリのおもちゃだった。一昨日はナッツチョコだった。明日は何が出てくるのだろう。ちなみに、ワカは魔法使い少女のアドベントカレンダーで、今日はブドウ味のグミキャンディで、昨日はほうきのおもちゃが出てきていた。  今年は、私がワカとママにサプライズプレゼントをすることにした。この前、ママのお友達のエリちゃんが遊びに来ていたときに、こっそりと楽譜をコピーしてもらった。エリちゃんは、ママの小学校からの親友で、ピアニストをしている。 音楽家って言うと、音楽室に貼ってあるベートーベンの絵のように、厳しかったり気むずかしい感じって思ってしまうけど、エリちゃんは違う。すごく優しい。 でも、音楽になるとエリちゃんは自分自身にとても厳しい。 絶対に妥協を許さない。 体調が悪くてもその信念は曲げないから、気がつくと体調が悪くて立つこともできなくなっている。 そんなエリちゃんの体調に一番に気づいてあげれるのが私のママだ。そんなエリちゃんだからこそ、私は少しだけ音楽を教えてもらおうと思った。  エリちゃんは、自宅では生徒さんをとらない。だから私は、エリちゃん以外のピアノの先生に教えてもらっているけど、私はやっぱりエリちゃんの音が好き。でも、あんなふうに自分自身に厳しくはできそうにないから、私は音楽もピアノも好きだけど、音楽家になることはちょっと難しいかも知れないと思ってしまう。  クリスマスが1日づつ近づくにつれて、アドベントカレンダーをひとつずつ空けるように、ママにねだって百円ショップで買ってもらったクリスマスの飾りつけを、自宅の玄関や窓に1日ひとつずつ増やしていった。今日付けるのは、緑色の雪の結晶の飾り。これは階段の手すりのところにつけよう。  今日は、ワカと2人で、近くの公園に行って、ドングリや松ぼっくりや小枝を拾って集めた。それを自宅に持って帰ってひもでぐるぐるに結んで、時間をかけて特製のクリスマスリースを作った。  クリスマスは、キリスト教のお祭り。イエスキリストは、全人類の贖罪と、神との新たな契約のためにこの世に現れた人。そんな大きなことは他の誰にもできない。  でも、私にだって願うことはできる。私はママの幸せとワカの幸せを願う。きっと、クリスマスは、どんな人でも幸せになって良い日なんだと思う。  クリスマスイブの日は、おばあちゃんとおじさんが遊びに来て、唐揚げやピザを一緒に食べて、ブッシュドノエルをみんなで切り分けて食べた。プレゼント交換をした。私は、不思議の国のアリスのジグソーパズルをもらった。  そして、私からの音楽のプレゼント、緊張してちょっと間違えたけど、気持ちは伝わったはず。 電子ピアノで演奏した曲は、サンタが町にやってきたと、もろびとこぞりて。 私の演奏を一番喜んでくれていたのは、ワカだった。  翌日、眼を覚ますと、枕元にサンタさんからのプレゼントが届いていた。あけてみると、毛の長い茶色い猫のぬいぐるみだった。ママの友人の笛吹さんが飼っている、ウォルナットちゃんに似ている。とてもかわいい。  ワカのサンタさんからのプレゼントは、かわいいパンのキャラクターのマスコットがついている、おままごとセットだった。    今日のこの日は、どんな人でも幸せになって良い日。来年も良いクリスマスでありますように。
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