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第三話 簡単にはいかない
「あすみが僕の傍にいるのは当り前のことだと思ってたよ」
もしかしたら彼女の事を何もわかっていなかったのかもしれないと思い始めた僕は、ロボネコに話しかけた。
「そう思う?」
「諦めないほうがいいのかな・・」
ロボネコは表情を変えずに、きみが決めることだよと言った。
黙っている僕に、彼はわかった?と念を押した。
「そっけねえ~」
僕はロボネコに向ってムリしてへらへらと笑ってみせた。
良太と離れていることにいつまでたっても慣れない。
これほどつらいのならば、いっそ記憶から彼の存在を消してしまいたい。
ときどき白昼夢を見る。
先日は良太が私から解放されて心地よく暮らしている様子を天上から見ている空想をしてしまい凹んだ。
以前から良太が時々私をガン見してくるとこがあった。
「なに?」
冷たく問う私に対して、彼はただへへへと笑い、見とれちゃったという。
体が覚えている。
彼の事を。
考えまいとするのだが、懐かしさで息が詰まる。
「ねえってばー」
たまに聞こえていない振りをして意地悪をする私に、子どものように覗き込んでくる彼。
泣くもんか。
いつかは皆終わるのだ。
日を追うごとに、おあずけが堪えてきた・・。
不用心だったのだ。
病気が再発する可能性は多少なりとはあったというのに、今のような状態になることを想像するのに抵抗があった。
できることならばずっとずっと良太のことを側で見守っていたかった。
彼という人は、何をしても上手くいかないことの連続で、隣で笑って許してあげることが快適すぎて、どうしても立ち止まることができなかった。
まだ足りない。
もう少しだけ良太の側に戻りたい。
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