俺のひとりごと

1/1
前へ
/25ページ
次へ

俺のひとりごと

「そうだなぁ。饅頭でも買っていくか…」 小さく呟いた声は、会計の姉ちゃんに聞こえたのか、ニコニコしながら声をかけてきた。 「おだいじに」 医院も大変だな。こんなじいさんに気を使う。先代から世話になったてるから、世間で言う"かかりつけ医"ではあるなぁ。 家まで俺の足では30分。夏と冬は辛いが今は楽しみがある。短いが桜並木がある。今年もきれいに咲きだした。 前に買ったのはぼた餅だった。今日は桜餅にしよう。葉っぱも食べたい。どうにか杖無しで歩きだしながら思う。 隣の薬屋で薬をもらう。薬を入れたビニール袋はいつものように後で持つ。曲がった腰だとこの方が歩きやすい。 小さなカバンも忘れずある。カバンを忘れ、薬屋の姉ちゃんが追いかけて来たことがあった。1回だけだから家族にはナイショだ。 昔からの商店はやめちまった。酒屋で食料品から煙草、熨斗紙まであった。ノートや鉛筆もあった。 息子が村外れでコンビニを始めて20年くらいになるかなぁ。国道に近いからか繁盛してるようで、駐車場を広くしたらトラックまでいる。 年寄りの足で行ける店はここだけだから桜餅があって良かった。薬の袋と桜餅の袋をぶら下げて家に帰ろう。 車に気をつて後の半分を歩きだす。 秋には孫娘が嫁にいく。今はそれが楽しみだ。それまでは元気でいたい。ばあさん、それまではむかえに来るなよ。お前の分もしっかり見るからな。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加