妖しく光る月のせい

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「ん。」  その一音だけを閉じたままの口から発し、缶ジュースをこっちに差し出す友人の真人(まなと)。真人はその整った眉を苦しげにひそめ、切れ長の目で妖しげな視線を寄越してくる。  “ん?”って?俺にこのジュースを飲めって言うのか?プルトップが開けられ少し軽くなった缶……明らかに飲みかけのその缶ジュースを受け取って、しばらく逡巡してしまう。  これって、これって……間接チューってやつじゃ……。  俺も、俺も真人の事は好きだよ?友だちとして。友だちとして……で、いいんだよな?あれ?じゃあ異性に好きって言うのはどういうんだったっけ?何が違うんだ?  “好き”と“好き”の境界線がぼやけて曖昧になる。  ああ、そうか。同性でも好きになっていいんだよな。そうだよ、間接チューでも何でもしていいんだ。  思い切って缶に口をつけ、ジュースを勢いよく口に入れた時だった。 「それ期間限定、塩キウイゴーヤーサイダー、マジで激マズ。ありえねー。」  真人がそう言ったのと同時に口に含んでいたジュースを思いっきり吹いてしまった。 「うわっ、何だよー。きったねー。」  ゴメン、何か勘違い。勘違い……だよな?そう、きっと妖しく輝く月のせいなんだ。多分、きっと……。 〈end〉
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