いやらしい笑み

3/5
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
コールセンターへと電話をすると、親身になって話を聞いてくれた。 聞いた上で、ハラスメントの酷さを上層部にわかってもらうのが一番だろう、と答えてくれた。 危うい手段ではあるが、盗聴なり盗撮なりで証拠を掴んでおくのもいいのでは、とアドバイスもくれた。 だから、私はカメラを仕込んだ。 仕込んだその日、さっそく上司は体を触ってきた。胸も揉んできた。 抵抗もしたが「こいつの蛮行をカメラに収めなきゃ」という気持ちが、自らに隙も生んでしまったのか。 「なんか、今日はあんまり、嫌がってないね」 などと笑みを浮かべながら、上司は調子に乗り始めた。 下半身に手を突っ込みながら、服を脱がそうとし出した。 必死に抵抗しても、火がついた彼は暴走をやめなかった。床に押さえつけ、しまいには腹を殴ったり髪の毛を引っ張ったりして、私の体を傷つけた。 殴られるのが怖くなり、なすがまま、なるがまま、私は性的暴行を受けてしまった。 酷いやつだとはわかっていたが、ここまでするとは思わなかった。 「じゃ、また明日な」 と吐いて上司は会社を後にした。 悲しくて悔しくて、なんだか情けなくもなって私は泣きながら帰路を辿った。 でも一縷の望みもある。 しっかりと、カメラには捕らえたのだ。 人に見られるのは酷な「証拠映像」ではあるが、上層部には確認してもらいたい。 そうなれば、さすがに彼は会社から消え去るだろう。 暴行を受けたことを公にはされたくないので、警察に訴えようとは考えていなかった。 とはいえ、あいつの弱みを、私はしっかりと握ったのだ。 ただ「証拠」を手にしたとはいえ、ひとりで立ち向かうのは怖かった。 なので私はお悩みコールセンターへと再び、電話した。 事態の深刻さを知り、直接お会いしてお話しましょう、という流れになった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!