誰かに見られてる

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「あれっ」と思わず声が出た。理解が追いつかなかった。僕は男の身体をすり抜けて、間抜けにもその場に崩折れたのだ。男は御札を持っていない。それ以外の対抗策を講じている様子も無い。何だ。何が起こったのだ。男は女の子に「大丈夫?」と声をかけていた。そこで気付いた。目を凝らすと、男の姿は半透明を成していた。うっすらと男の後ろにいるブラウスの女が見える。 「ご協力どうもありがとう」とブラウスの女。 「いえ、とんでもない。力になれてよかったです」 僕は怒りを抑えきれなかった。 「お、おまえ、僕と同じ、なのか。同じなんだな?!」 「失礼な人だ。あなたと一緒にしないで下さい。僕は生きている女性、しかも未成年につきまとって取り憑こうなんて考えた事はない」 何故だ。僕と同じ立場なのに、何故この男だけが女の子と仲良くする事が出来るんだ。僕なんて近付くだけでもやっとなのに。許せない。許せない。許せない。許せない。気が狂いそうだった。だが、今は何としてでもこの場から逃れなくては。ブラウスの女が僕にとどめを刺そうと近寄ってくる。 考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。
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