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『間もなく』男性アナウンスが耳に飛び込んできた。『2番線を急行電車が通過致します。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください』
一瞬。ほんの一瞬だ。ブラウスの女も、女の子も、男もアナウンスに注意が向いた。その隙を僕は逃さなかった。急いで3人から距離をとった。
「ま、待ちなさい!!」ブラウスの女が叫ぶ。
急行電車が駅にやって来た。よし。満員電車だ。僕は走りながら、電車の方に手を伸ばした。ドアに身体を寄せている乗客に僕は磁石の様に吸い付く事ができた。やった。うまくいった。そのまま僕は急行電車に乗り込んだ。ブラウスの女の悔しそうな表情がどんどん小さくなっていく。
危なかった。ヒヤヒヤした。万が一の為、8月の真っ只中を選んで良かった。女の子を尾行しようと決めた時から、このタイミングを選んでいた。普通なら人の少ないところを狙うべきだったかもしれない。が、もし失敗した時、逃げるには人の多い時間帯の方がベストだ。女の子に取り憑く事が出来なかったのは残念だが。結果オーライといったところか。仕方がない。あの女の子は諦めるとしよう。
また他の可愛い女の子を見つけるとしよう。そう思いながら、僕は揺れる満員電車に身を委ねた。
終
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