想い出のあとさき

4/8
292人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
約束した夜、ヒューは意を決して大河のアパートに向かった。 大河と知り合って3ヶ月以上経って、自分も大河がずっと気になっていた事を素直に認めた。 大河が自分に似た誰かをいつも追っていたことに、嫌な気持ちがあったのは、自分もその相手に嫉妬していたんだと気がついた。 大河を好きだと自覚したのは大河から告白された時だったが、ずっと大河を大切にしたいと思っていた。 「いらっしゃい」 なんとなく緊張して大河はヒューを部屋に入れた。 ダイニングテーブルに向かい合わせで座る。 ヒューを見つめながら大河は思った。ヒューに断られたら、ちゃんと諦めるつもりでいた。 「あれからよく考えたんだ。正直、タイガをどう好きなのか考えた。その時、タイガの言葉を思い出した。タイガ言ったよね?好きだった人に、抱かれたいって思っていたって」 ヒューの言葉に大河は俯いて赤面した。 「タイガを抱きしめたい、キスしたいって気持ちに、俺もなってるって思った」 ヒューの言葉に、大河はびっくりしてヒューを見つめる。 「タイガを好きだって気がついた。抱きしめたいほど、好きだよ」 照れるヒューを大河は見つめて微笑んだ。 「嬉しい。正直、時間が経ってヒューが冷静になったら、断られると思っていたから。なんか、夢みたいだ」 大河はそう言って笑うと、恥ずかしくてヒューを見れない。 「冷静に考えての結果だよ。いっときの感情じゃない」 ヒューはテーブルの上に置いている大河の手を握った。 「好きだよ」 ヒューの眼差しに、大河は幸せで溶けてしまいそうだった。 「好きだ。ヒューが大好きだ」 大河が応えるとヒューは笑った。2人は幸せに包まれていた。 「夕飯はどうする?何も準備してないんだ。外に食べに行くかい?」 大河が聞くとヒューは立ち上がる。 「スーパーで買ってこよう。2人きりで長く過ごしたい」 ヒューの頬が赤くなっていた。照れているんだと大河も分かった。 近くのスーパーで焼きたてのピザとビールを買うと、早々に大河の部屋に2人は戻った。 大きなピザを2人で平らげると、リビングのソファに並んで座った。 無言のまま手を握って、お互いテレビ画面を見ている。 大河はドキドキしながら、ヒューの手を握っている。 緊張しているのか、お互い手が湿っているのが分かる。 「タイガ」 ヒューが大河の名を呼ぶ。大河がヒューを見つめると、2人は自然な形で唇を重ねた。 長いキスが終わると、大河はヒューに抱きつく。 「大好きだよ。ヒュー。初めて会った時から、好きだった」 大河の告白に、ヒューは大河を強く抱きしめると再び唇を重ねた。 場所を移しベッドの上で、2人は抱き合ったままキスを繰り返す。 大河の服を脱がし、肌をヒューの掌が滑るように這う。 「ヒュー。気持ちいい。もっと、触って」 甘えるように大河は言う。ヒューに触れられているだけでトロトロに蕩ける。 「タイガの肌、綺麗だね。スベスベで気持ちいい」 首筋にキスをしながらヒューは言う。 「あッ!んん!」 ヒューは大河の両手を押さえて、大河の乳首を舌で舐めると大河が喘ぎだす。 「ああッ!ヒュー。くすぐったい」 ヒューの舌が執拗に乳首を攻める。 「くすぐったくないでしょ?気持ちいいでしょ?乳首もアレも硬くなって勃ってる」 ヒューの腹に、大河のモノが硬くなって当たっている。ヒューの勃起したモノも大河の腹に当たっていた。 「ヒュー。お願いだ。挿れて、欲しい」 恥ずかしそうに大河は言う。 「いいの?」 びっくりしてヒューは言う。ヒューは大河が男の経験がある事を知らない。 ずっと好きだった男に片想いだと思っていたから、まさか、経験があるとも思っていなかった。 「ヒューが嫌じゃなければ。俺は、ヒューが欲しい」 大河が言うと、ヒューは大河の腰を上げた。 ヒューにとっては、はじめての経験だった。 戸惑いながらも入り口に先端を当てると、ゆっくり挿れていく。 「ああッ!ヒュー!」 灼けつくような熱を感じながら、大河はヒューのモノを受け入れた。 「タイガ。すごくキツい。もう、入りそうにないよ」 大河を労ってヒューが遠慮している。 「大丈夫。ゆっくり挿れて。ちゃんと奥まで挿れて欲しい」 ヒューは大河の苦悶する顔が綺麗すぎて、我を忘れそうになりながらもゆっくり奥まで挿れた。 「ヒュー。嬉しい。ヒューと繋がれた」 大河はそう言ってヒューに抱きつく。 「タイガ、そんなに締めないで!我慢できなくなる」 ヒューは大河を抱きしめながら腰が動いてしまう。優しく丁寧に動こうと思いながらも、あまりの気持ちよさにヒューは腰を激しく動かしてしまう。 「ああッ!熱いよ、ヒュー。あああッ!」 ビクンビクンと大河はイってしまったが、我慢できずに腰を動かした。 「気持ちいい!ヒュー、もっと攻めて」 淫らな大河に、ヒューは興奮する。 大河の艶かしい腰使いに、ヒューも合わせて腰を振る。 「タイガ、凄いよ。厭らしい。タイガがこんなに、厭らしいなんて、ずるい」 いつもは控えめでおとなしい大河が、ベッドの中では淫らで、ヒューは狂おしいほど大河の虜になってしまった。 「!!」 ギュッと大河を抱きしめヒューが大河の中に果てた。大河は潤んだ艶かしい瞳でヒューをジッと見つめている。 「タイガ」 ヒューは吸い込まれるように、大河に顔を近づけてキスをする。 妖艶な大河をもう離せないと思った。大河の魅力に堕ちてしまった。 その夜は、朝まで大河の身体をヒューは愛し続けた。 大河もヒューを離せなかった。ずっと繋がっていたいと願ってしまった。 しかし、まさかその数週間後、大河がロイに刺されるとは思いもよらなかった。大河が刺された事でヒューは自分を責めた。 病院に運ばれた夜は、手術が終わるまで待合室で、駆けつけたダニエルと共に過ごした。 ずっとそばに付いていたかったが、仕事を放り出すわけにもいかず翌朝は出勤し、仕事が終わると急いで大河の病院に急いだ。 ICUに入っているので面会はできなかったが、今日も仕事帰りにヒューは大河の元に通う。 まさかそこで、大河が恋い焦がれていた、日本にいるはずの伊丹と会うとも知らずに。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!